個人再生とは?(後編)

こんにちは。司法書士の粒来です。

今回のコラムでは、前回コラムに続き、個人再生の手続きをご紹介します。

今回は、手続きを進めるための主な条件について説明します。

専門的で地味な話になりますが、ご了承ください。

条件1 破産手続開始の原因となる事実の生ずる恐れがあること

まず、任意整理(債務額はそのままで分割方法だけを緩和する)での解決が難しいことが必要です。

個人再生では、裁判所が債権者の請求権を半強制的にカットすることになります。

そのため、権利を制限される債権者とのバランス調整のため、任意整理で普通に支払っていける余裕のある人は、個人再生ではなく任意整理を選択することになります。

任意整理の予算(月額)の目安額は、債務総額÷60です。

毎月返済に充てられる金額が上記の目安額を下回る場合はもちろん条件を満たしますが、それだけでなく、たとえば債権者の中に長期の分割払いに協力しない会社がおり、そのせいで予算オーバーになってしまったような場合にも、同様に任意整理での解決は不可能なので、個人再生で進める条件を満たすことになります。

また、収支だけでなく、保有する財産の額があまりに多額でないことも必要です。

特に気をつけなければならないのが住宅です。ローンの残債務額が住宅の価値を上回る「オーバーローン」の状態であれば、住宅の資産価値は事実上ゼロなので問題はないのですが、ローンが完済間近の場合や途中で繰り上げ返済をしている場合、ローン残を差し引いても住宅の価値が残る方がいらっしゃいます。

その場合、住宅の評価額とローン残の差額がそのままご本人の財産となるので、注意が必要です。

条件2 継続して又は反復して収入を得る見込みがあること

個人再生は、債務が免除されて終わりの破産とは異なり、減額後の債務を分割で支払っていくことが必要です。

そのため、確実に分割払いを行っていけるかどうかという点にも、裁判所の審査が及びます。

その点、まずポイントになるのが、現勤務先の勤続年数と雇用形態です。

だいたい勤続5年以上で正社員であれば、会社の経営状態が危ない等の事情がない限り、裁判所に安心してもらえます。

ただ、必ずその条件を満たさなければダメというものではありません。

必要なのは3~5年の期間、毎月決められた額の返済を続けていけることを理屈で説明することです。

したがって、たとえば季節や時期によって繁閑のある仕事であれば、月次だと不安定でも年間通して見れば収支が安定していると説明したり、一般的にみれば不安定な業態・勤務形態だったとしても、過去の実績や、同条件で勤務する同僚の状況から、この先も収入が安定しているであろうことを説明したりします。

そうすることで、非正規雇用や収入に波がある自営業でも、裁判所に個人再生を認めてもらえる可能性が高まります。

いかがでしたでしょうか。

分割払いの予算確保のさえできればよい任意整理と返済がまったくできない場合に行う破産の手続きは、いずれも対象となる方のイメージがしやすいのですが、中間に位置する個人再生は、具体的にどのような方が対象となるのかも他の2つと比べて分かりにくい印象があります。

また、今回触れた条件以外にも、個人再生を進めるために満たさなければならない条件が数多くあります。

したがって、個人再生で進められるかどうかは、まずは当事務所にご相談ください。

なお、別のコラム記事では、債務整理の最後の切り札、自己破産についてもご紹介しています。

ご興味のある方はぜひご覧ください。