こんにちは。司法書士の粒来です。
今回も前回コラムに続いて、自己破産の手続きについてご紹介します。
自己破産をすると、一部の例外を除くすべての負債の返済義務がなくなります。
しかし、それは別にお金を貸した債権者が悪いことをしたために裁判所に懲らしめられるわけではありません。法律上問題なく主張できるはずの権利を、債務者からの申立により一方的に請求できなくされてしまうのです。
つまり自己破産は、債権者にほぼ全面的に泣いてもらい、その犠牲の上に債務者の経済的な再生を図る手続であるということができます。
したがって、破産を審査する裁判所も、債務者にばかり肩入れはできません。
申立書の内容などから、債権者の犠牲の上に債務者を保護するに足りる事情があるかどうかを審査する必要があります。
(その結果、内容に問題がなければ免責が許可されますが、問題が多い場合は、免責を不許可とされる(破産しても借金がなくならない)こともあります。)
前回記事で、生活に必要な家財道具などは処分の対象とならないと説明しました。しかし、あまりに多くの財産を破産者に持たせたままで借金だけを帳消しにするのでは、債権者にとって不公平です。
そのため、債務者が一定の基準を超える財産を保有している場合は、免責を受ける前提として超過分の財産が換価され、債権者に分配されることになります。
破産により返済を受けられなくなってしまうのが原則であるにもかかわらず、一部の債権者だけが債務者から支払いを受け続けられるとなると、返済を受けられない債権者は到底納得ができません。そのため、借入の内容を問わず、すべての債務について返済をストップする必要があります。
債権者が消費者金融やクレジットカード会社だけの場合はそれほど問題になりませんが、債務整理をすると車を引き揚げられてしまう自動車ローンや、親族・知人からの借入がある場合でも、それらの債務だけを支払ってしまうことは許されません。
以上のポイントは、いずれもお金を貸した側の視点で考えると普通のことなのですが、債務者視点に偏っていると、どうしても単なる手続進行上の「不都合」として捉えてしまいがちになります。
依頼者(債務者)の方が、近視眼的にとにかく自分の有利になるよう話を進めたくなるのはある意味当然だと思いますが、専門家として破産手続に関与する以上は、依頼者から一歩離れて手続全体を俯瞰し、どう進めるのが最も依頼者のメリットになるのか(裁判所の審査をスムーズに進め、依頼者が最終的に免責を勝ち取れるのか)を考える必要があります。
(結果、依頼者の方に冷たいと思われることもあるかも知れませんが、ひとえに依頼者のためです。)
我々司法書士の板挟みの事情と苦しい胸の内(言い過ぎました。)について、ご理解いただけたなら幸いです。
次回も、破産手続における裁判所のチェックポイントについてお話を進めていきます。
どのような記事か、お楽しみにお待ちください。( -`ω-)+ノシ