スタッフ日記

相続まめ知識⑥ ~死亡する順番と相続人の範囲(2)

  2020/04/07    ブログ

 

こんにちは。粒来です。

 

前回の記事 は,相次いで相続が発生した場合,お亡くなりになった順番により相続人の範囲に違いが出るというお話でした。

では,亡くなった順番が不明の場合はどうなるのか,というのが今回のお話です。

 

このケースについて,民法には次の規定があります。

 

第32条の2

数人の者が死亡した場合において,そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは,これらの者は,同時に死亡したものと推定する。

 

どちらが先に亡くなったかが不明の場合,両者が同時に亡くなったものと推定されます。

 

そして同時死亡の場合,片方が死亡した時には他方も死亡していることになるので,両名ともに,お互いの相続人にはなりません。

その結果,このケースでは前回の②と同じく,父は祖父の相続人にならず,祖母のほかは,父の相続権を代襲した子だけが,祖父の相続人になります。

 

まとめると,祖父の相続人になるのは,

●まず祖父が死亡,次に父が死亡したケース(前回の①)

→ 祖母・母・子

●まず父が死亡,次に祖父が死亡したケース(前回の②)

→ 祖母・子

●どちらが先に死亡したかが不明のケース(今回)

→ 祖母・子

 

ということになります。

 

このように,法律で定められた相続人の範囲は,亡くなるタイミングがずれただけで変わってしまう面倒なものです。

今回はシンプルな事例でしたが,実際の事案では,数次相続や代襲相続が何回も重なって,じっくり検討しないと誰が誰の相続人なのかさえ分からないものも多くあります。

 

そのように事態が複雑になってしまってから司法書士に依頼すると,当然ですが時間も費用も余分にかかります。

 

相続発生後すぐに着手することで,手続きにかかるコストを大きく減らすことができるのです。

 

 

なお,追い討ちをかけるようで恐縮ですが,このままいくと相続関係が複雑になってしまいそうな方や,既に手に負えず投げやりになってしまっている方に悲報です。

 

早ければ来年から,相続登記が罰則つきで義務化される見通しです

ついに,年貢の納め時がやってきます。

 

いざそうなってからバタバタしないよう,また少しでも傷が浅くて済むように,お心当たりの方は,すぐに当事務所にご相談ください。

 

相続まめ知識⑥ ~死亡する順番と相続人の範囲(1)

  2020/02/28    ブログ, 相続・遺言

こんにちは。粒来です。

 

ブログや事務所通信の読者の方から少しでも好意的な反響があったら,ちょっと渋々感を出しながら再開しようと準備していた「相続まめ知識」連載ですが,当然,そのような声は待てど暮らせど届きません。

 

ブログの話題が尽きてきたので,自主的に再開したいと思います(;_;)

 

今回の話題は,「死亡する順番と相続人の範囲」です。

 

 

上の相続関係で,祖父と父が相次いで亡くなってしまったケースを想定してください。

 

ポイントは,先に亡くなったのが祖父なのか父なのかによって,祖父の財産を相続できる人の範囲が異なるという点です。

 

①祖父が先に亡くなったケース

祖父が死亡すると,その相続人は祖母(祖父の妻)と父(祖父の子)です。

その後,祖父の相続について手続きをしないまま父が死亡すると,父が祖父から相続した「祖父の財産を相続する権利」は,母(父の妻)と子(父の子)が,相続人としてそのまま引き継ぎます。

その結果,祖父の相続人は,もともと祖父の相続人だった祖母と,父の死亡により祖父の財産を相続する権利を取得した3人となります。

 

②父が先に亡くなったケース

これに対し,父が先に亡くなり,その後に祖父が死亡した場合は,事情が異なります。

祖父の妻である祖母は問題なく相続人になれますが,本来,祖母と一緒に相続人になる予定だった父は既に死亡しています。そのため,父は祖父の財産を相続する権利がありません。

(権利や義務は,生きている人にしか帰属しません。)

この場合には,以前にも 相続放棄の記事 で触れたのですが,法律には「代襲相続」という規定があり(民法887条2項),それによって相続人の範囲を決定することになります。どのような規定かというと,「既に死亡してしまった人の代わりに,その子が相続する権利を承継する。」というものです。

今回でいうと,既に死亡している父の代わりに,その子が相続する権利を承継します。規定されているのは「その子」だけなので,母(父の妻)は,祖父の相続について権利をもつことはありません。

その結果,祖父の財産を相続する権利は,祖父の妻である祖母と,父の相続権を代襲した2人となります。

 

このように,祖父と父のどちらが先に亡くなるかによって,母が相続人にあたるかどうかが違ってくるのです。

換言すれば,どちらの夫が長生きするかが,この家族における嫁と姑のパワーバランスに絶大な影響を及ぼすということになります。

愛する妻のために,それぞれの夫は是が非でも長生きしなければいけません。

 

では,さらに話を掘り下げます。

非常に稀なケースにはなりますが,祖父と父,両方ともお亡くなりになっているのは明らかだけれども,どちらが先に亡くなったのかが確認できないという場合は,どうなるのでしょうか。

実は,このようなマニアックなケースについても,法律にはきちんと規定があります。

 

どういう規定かというと。。。

 

長くなってしまったので,続きは次回にします。

乞うご期待!

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編(番外編)~

  2020/01/29    ブログ

こんにちは。粒来です。

 

先日のブログ記事 で,書面を郵送するアナログのやりとりが多いと書いた裁判手続きですが,現在,着々とIT化の準備が進められているようです。

当面は書面のやりとりを郵送ではなくインターネット経由で行うシステムを構築する方針のようですが,将来はもしかすると,出廷できない代理人司法書士のホログラム映像が法廷に出現するような,スターウォーズさながらの裁判手続が実現するやもしれません。

 

しかし,今回のブログで私が声高にPRしたいのは,日本中の司法書士がおそらく全員一致で,裁判なんかいいから早くオンライン化されてほしいと思っている,別のシステムのお話です。

 

何かというと,これ↓です。

 

不動産(固定資産)の評価証明書。

スターウォーズから急にしみったれた話になったなどと思わないでください。

 

不動産登記は,申請と同時に法務局に税金(登録免許税)を納付しなければならないことになっています。そしてこの登録免許税,不動産の固定資産評価額に税率をかけて計算される場面が多くあります。

このようなケースで法務局が不動産の評価を誤ると,税金を取りっぱぐれる事態になりますが,当然そんなことはあってはなりません。

そうすると,法務局は,管轄の不動産の評価額を網羅的に把握しているのだろうと考えるのがふつうです。

 

しかし,そんなことは全くありません。

札幌司法書士会の管内にある約60の市町村のうち,法務局が個別の不動産の評価額を把握しているのは,実は12市町村だけです。

 

では,残りの市町村の不動産のときにどうしているかというと,登記申請の関係者(当事者)が,事前に自治体の窓口で不動産の評価についての証明書を発行してもらい,それを登記申請の際に法務局に提出するという,極めてアナログな形が取られています。

 

しかも,この固定資産評価証明書,登記が独占業務であるにもかかわらず,司法書士が職権で取得することは認められていません(怒)

 

個人情報保護の観点から,私人が所有する不動産の評価額は,慎重に取り扱うべきとのことのようです。

理屈は分かるのですが,個人情報も何も,全国民に公開されている登記簿を取れば,その不動産の所有者はおろか,その所有者がいつ,どこの金融機関でいくらのローンを組んだかまで一目瞭然です。

不動産の評価額だけ死守したところで頭隠して尻隠さずだと思うのですが,残念ながら今のところこの運用が改まる兆しはありません。

 

裁判のように大がかりなものではなく,自治体で既に管理しているデータを,法務局や関係者に開示するだけのシステムです。頑張ればすぐにでもできそうな気がするのですが,オンライン化の恩恵を受けるのがほとんど司法書士だけだからでしょうか,まったく話が進む気配がありません。

 

1日も早くオンライン化が実現されることで,申請書類をすべて揃えた後で評価証明書の取得忘れに気づき,恥を忍んで依頼者に委任状をもらう粗忽な司法書士(私とは言っていません(; ̄3 ̄)~♪)がいなくなることを,心から願っています。

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編②~

  2019/12/03    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

前回の記事 は,不動産決済の場で平静を装っている司法書士が内心実は神経をすり減らしているというお話でしたが,今回は,そんな不動産決済の場で,実際にあった怖い話です。

 

前回,司法書士は不動産取引において「人」「物」「意思」の確認をしているとご紹介しました。

このうち「人」の確認は,一般的に,当事者ご本人しか持ち得ない身分証の原本の提示を受け,疑わしい点がないか確認する方法で行います。

しかし,不動産は高額なので,時折,売却の権限がないのに売主になりすまし,売買代金を騙し取ってやろうと企む輩が出現します(積水ハウス事件が記憶に新しい,いわゆる「地面師詐欺」)。

 

司法書士も,明らかな書類の偽造を見逃したりすると当然ペナルティーを受けるため,見た目が本物っぽいか以外にも,何カ所か確認のポイントを設けて身分証などをチェックしています。

 

そんな中,ある不動産取引の場で,売主さんからご本人確認資料として運転免許証の提示を受けました。

提示された免許証がゴールドでなく青色だったので,この人はいったいどんな交通違反をしたんだろうと,本人確認とは全然関係のない余計なことを考えていたところ,ふと,免許証の有効期限が交付の5年後であることに気がつきました。

 

運転免許証をお持ちの方はご存じかと思いますが,一般的に,ゴールド免許は更新が5年おきで済みますが,青色の免許証の更新は5年ではなく3年です。

したがって,青色の免許証の有効期限は,ふつうは3年間のはずなのです。

 

冒頭にも書きましたが,不動産決済の場で,司法書士は基本的に平静を装うものです。

例にもれず私も平静を装っていましたが,内心は?の嵐です。

これがもし偽造免許証の詐欺事案だったとしたら,関係当事者が大きな損害を被ってしまいます。

そして,こんなケアレスミスを看過した私にも,責任がないはずがありません(←ここが重要)。

 

結局この時は,その場でインターネットを検索し,警察署のウェブサイトに『過去5年間に軽微な違反(3点以下)1回の方は,青色免許証でも有効期間が5年間になる』と紹介されているのを発見しました。

それとなく売主さんに事情を聞いてみたところ,上記の情報と同旨のお話をされたので,ほっと一安心し,不動産決済はつつがなく終わりました。

(ドタバタしたのは,私の内心だけ)

 

司法書士の仕事は不動産登記の専門知識だけでなく,こんな一般常識も必要なのかと痛感した1日でした。

 

以上,今回は不動産決済で実際にあった怖い話をご紹介しました。

最後までお読みいただいた方の中には,「司法書士はその程度のエピソードで怖いとか騒いでいるのか。」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし,実際,司法書士人生で最もビビった時の話は,とてもじゃないですがこんなブログで笑い話にできるような話ではなかったので,書けなかっただけです。

 

お察しいただければ幸いです。

|ω・`)チラッ

 

いま,会いにゆきます

  2019/11/18    ブログ

 Amazonで買い物をしていたら,いつの間にかAmazonプライム会員になっていたのでそのまま惰性で会員を継続しています。せっかくなので最近の休日はプライム会員特典の映画を観てまして,その中にある「いま、会いにゆきます」という映画を久しぶりに観ましたが,今のところ,私のところに運命の人が会いに来る気配はないです及川です。

 この映画の主人公である秋穂巧(中村獅童)は,司法書士事務所で働いておりまして,司法書士をしている身としては気になるところです。
 所長と思われる司法書士は映画の中では常にお昼寝状態なのですが,一方,当事務所の所長はたまにしか寝ません。
 あと,映画の中で事務所内でテレビに映る天気予報を見るシーンがあるのですが,当事務所にはテレビ自体がありませんね。
 あまり色々な事務所にお邪魔することはないのでわからないのですが,司法書士事務所ってあんなイメージなんでしょうかね。

 さて,以下はネタばれを含みます。

 巧の妻となる澪(竹内結子)は,大学生の時に交通事故に遭い,昏睡状態のときに自分が28歳で死んでしまうことを知ってしまいます。そして,死亡から1年後の雨の季節に自分が蘇ることを知ります。
 また,蘇って自分がもう少しで消えてしまうことを知ってから,息子の佑司に家事を一生懸命教えたり,巧の事務所の同僚の女性に巧と佑司のことを託そうとしたり,佑司が18歳になるまでの12年分の誕生日ケーキを予約しに行ったりします。

 そんな澪さんには,是非,「生命保険信託」をおススメしたい。

 生命保険信託とは,死亡保険金請求権を信託財産とするもので,信託により「年毎,分割して保険金を渡す」とか「支払いには○○の承諾が必要」というように,単に資産を遺すだけでなく,「渡し方」にもこだわることが出来ます。
 これによって,受取人の浪費などを防ぐことができるかもしれません。

 愛する家族のために資産を遺すことが出来る良い方法の一つでしょう(自分の死期を知っているならば効果は絶大)。
 きっと,巧が司法書士事務所に勤めているという設定は,このような対策が万全であるというメタファーであるに違いない。

 さあ,あなたの対策は万全でしょうか。
 信託は特に自由度が高く,なかなか自分だけではどうしていいか分からなくなってしまい,先延ばしにしてしまいがちですが,お早めに時間を取って取り組んでみて下さい。
 その他,認知症対策・相続対策は,出来れば予め専門家に直接ご相談ください。

 当事務所ご連絡いただければ,すぐ,会いにゆきます。

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編①~

  2019/10/25    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

140万円以下の争いごとについて交渉や裁判ができるようになるなど,昔に比べて司法書士が活躍できる場は増えましたが,今も昔も,司法書士のメイン業務といえば不動産登記です。

 

その中でも花形といえるのが,不動産の売買の場に立ち会い,その場で当事者の意向や登記の必要書類を確認して代金決済のゴーサインを出すという,いわゆる「立会業務」です。

 

司法書士は決済の場で,来ているのが本当に当事者本人か(ヒトの確認),売買の対象になっている不動産や当事者の認識に間違いがないか(モノ・意思の確認)をチェックし,かつ,登記申請に必要な書類がすべて揃っているかを確認します。

そして,それらの確認が済んだら,「代金の決済を行ってもOKです」と当事者に宣言します。

そうすると,司法書士が言うなら大丈夫だろうということで,銀行から買主,買主から売主へと,場合によっては億を超えるお金が動きます。

 

したがって,代金決済が済んだ後で,「実は,司法書士の確認不足で登記ができませんでした(๑´ڡ`๑)テヘ」なんてことになると,本当にシャレになりません。

融資した金融機関を出禁になるのはもちろんのこと,場合によっては司法書士のミスで損をした取引当事者から,賠償を迫られる可能性もあります。

 

そのため,決済当日に絶対に間違いが起こらないよう,司法書士は立会の前から,確認に確認を重ねて準備をしています。

 

代金の決済自体は1時間もあれば終わる(しかも大半は待ち時間)あっけない手続であるにも関わらず,司法書士がその場で預かるお金が少ない場合でも十数万円と高額であることから,不動産取引の最後になっていきなり現れ,多額の報酬をひっつかんで高笑いを残して消えていく,みたいなイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが,それは大きな誤解です。

 

その決済に至るまでに,司法書士は一撃必死のリスクに震えながら(言い過ぎました),入念な準備をしています。

そして,司法書士が預かるお金も,多くは法務局に納める税金,つまり実費です。

 

不動産決済に臨む司法書士は,水面を優雅に進んでいるように見えて,水面下で懸命に足ヒレを掻いている白鳥みたいなものなのです。

 

資格自体の認知度が低く,他士業(特に,名前が似ている行政書士の先生)と間違われることの多い司法書士ですが,その仕事の一端をご理解いただけたなら幸いです。

 

次回の記事では,そんな緊張感あふれる立会の場で,本当にあった怖い話をお届けします。

 

乞うご期待!

 

切手も積もればワクチンになる?

  2019/09/03    ブログ

こんにちは。粒来です。

 

時代はインターネット全盛ですが,裁判所や法務局の手続がインターネットでは完結しないこともあって,司法書士の仕事はまだ郵便でのやりとりが非常に多いです。

 

特に裁判所からは,1通出すのに1000円以上もかかる,「特別送達」という方法で書類が送られてくることがよくあります。

 

この仕事をするまで1000円切手なんて見たこともありませんでしたが,たかが切手と侮ることなかれ,さすがに最高額面ともなるとデザインにも気合いが入っています。

 

昔は「松鷹図」(写真左),今は「富士図」(写真右)

 

どちらも,日本びいきの外国人などには非常に喜ばれそうな渋いデザインです。

 

これは,もしかしたらただ捨てるのはもったいないのでは?と思って調べてみると,なんとインターネット全盛のこのご時世に,使用済み切手の収集家が絶滅せず,多数いらっしゃることが分かりました。

 

そこで,最近は使用済み切手は捨てずにストックしておき,寄付することにしています。

(もちろん,もとは仕事の郵便物なので,個人情報の漏えいは絶対にないよう注意しています。)

 

 

だいぶ貯まりました( ̄ー ̄)

 

とりあえずはネットで調べて,よさそうな団体に寄付するつもりですが,どなたかお勧めの寄付先をご存じの方がいらっしゃれば,ぜひ教えていただければ幸いです。

 

実質的支配者(←ただならぬラスボス感)

  2019/07/31    ブログ, 登記

こんにちは。粒来です。

 

某芸能事務所の闇営業問題のおかげで,「反社会的勢力」という言葉の注目度が一気に上がったように思います。

 

今回はこれにちなんで,司法書士と反社会的勢力との関わりについて,ご紹介させていただきます。

(誤解を招く表現でしたが,そういう意味ではありません。)

 

ちょっと前に,株式会社などの設立時の定款認証手続(会社の基本的なルールを設立前に公証人にチェックしてもらう)に一部変更がありました。

具体的にどういう変更だったかというと,会社の「実質的支配者」が反社会的勢力に属する人物でないかを定款認証時に確認して,該当する法人の定款を認証しないことで,反社会的勢力による法人の設立を妨げるという枠組みが,新たに作られました。

 

要するに,会社設立の手続にフィルターをひとつ設け,ヤク◯(やくまる)さんの悪だくみのための会社を設立しにくくしたということです。

 

規定の内容は,このようになっています。

 

公証人法施行規則

第十三条の四 公証人は,会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には,嘱託人に,次の各号に掲げる事項を申告させるものとする

(以下略)

 

公証人に申告する義務があるのは,定款認証の「嘱託人」です。

そして,司法書士が会社の設立登記を行う場合,多くは,実質的支配者本人ではなく,司法書士が定款認証の嘱託人となります。

つまり,司法書士が公証人に,「今回の設立にかかる会社の実質的支配者は,反社会的勢力ではありません」と宣言する義務を負うことになりました。

 

制度趣旨だけみると素晴らしい制度です。しかし,問題は実効性です。

なじみの方に法人設立を依頼されることもないわけではありませんが,会社設立の依頼者は,どちらかというと初対面の方が多いです。

司法書士は警察や公証人と違い,反社会的勢力に属する人物のリストを持っているわけではありません。目の前の依頼者が反社会的勢力でないことを確認する方法となると,結局のところ,その人の申告頼みになります。

(当たり前ですが,見た目で判断するわけにはいきません。)

 

しかし,司法書士に問われて「私,反社会的勢力です!」と堂々と申告してくれる人は,そもそも隠れ蓑の法人設立など行いません。

詳しく書きませんが,この制度には他にも抜け道があり,残念ながら今回の改正は,司法書士や公証人の責任や手間を重たくしただけの,ザル法の匂いがぷんぷんしています。

 

なお,新しい手続を経て定款認証を受けた後には,公証役場に請求すると,「申告受理及び認証証明書」というものを,無料で発行してもらえるようにもなりました。

これは,当該会社の実質的支配者が反社会的勢力でないことについて,公証人のチェックをクリアしたことの証明書であり,会社設立後に法人名義の預貯金口座を開設する際に,金融機関に提出するなどの活用方法が想定されているようです。

 

 

月末で雑務に忙殺されているところに連日の猛暑が重なり,内容がだいぶ愚痴っぽくなってしまいました。

アメトーーク!でも見て気分転換して,次回はもう少し明るい話題を提供できるよう頑張ります。

 

相続まめ知識⑤ ~相続◯✕クイズ(3)

  2019/06/14    ブログ, 相続・遺言

こんにちは。粒来です。

 

前回記事で,先輩の高井が6月8日に円山動物園に行ったらしいと知りびっくりです。

私もちょうど同じ日に,子どもを連れてゾウを見に円山動物園に行ってきました。

 

甲第1号証 ゾウの写真

 

私は気づきませんでしたが,鼻くそをほじりながら歩く姿を高井に目撃されていないか,とても心配です。

(もちろん鼻くそをほじってたのは,私じゃなく息子です。)

 

さて,(私にとって)長く厳しかった相続◯✕クイズも,今回が最終問題です。

今までの知識の総まとめのつもりで,取り組んでいただければ幸いです。

前回記事 の経緯から,これまでのクイズの結果をふまえて回答してもろくなことにならないのはお察しかもしれませんが,一応,前回の知識のおさらいをします。

 

知識4 亡くなった人の子どもが相続放棄をした場合,孫は相続人にならないので,孫が自分も相続放棄をする必要はない。

 

 

では,問題です。

 

第5問(超上級)

妻も子もいない人が,若くして多額の負債を抱え死亡した。相続人にあたる父母が相続放棄をした場合,父母の両親(亡くなった人の祖父母)が借金の相続を避けるためには,自らも相続放棄をする必要がある。

◯か✕か。

 

 

正解は。。。

 

 

◯です!

 

なんと,今度は前回記事の第4問とは逆の結論が正解になります∑( ̄ロ ̄|||)

もう訳がわからないですね。

 

 

なぜこのような違いが生じるかの答えは,亡くなった人の祖父母が相続人になる根拠と,亡くなった人の孫が相続人になる根拠の条文の,表現の違いにあります。

 

長文かつ退屈になるのは分かりきっていますが,いちおう司法書士のブログなので,詳しく解説したいと思います。

 

 

相続人になる人の範囲を規定した民法887条,889条は,次のような規定になっています。

 

第887条 被相続人のは,相続人となる。

(以下省略)

 

第889条 次に掲げる者は,第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には,次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし,親等の異なる者の間では,その近い者を先にする。

(以下省略)

 

注目していただきたいのは,889条では「直系尊属」(←親に限らず,祖父母,曾祖父母など,直系かつ目上の親族をすべて含む)となっているのに対し,887条では直系卑属(子に限らず,孫,ひ孫以降を含む)ではなく,「子」(←孫以降は含まない)となっているところです。

 

第4問 で説明しましたが,被相続人の孫は本来,相続人の地位(順位)をもっていません。子に死亡・相続欠格・廃除があったときにだけ,「代襲相続」という特別なルールによって,例外的に相続の権利を与えられます。

そして,子が相続放棄をしたときは,その特別ルールの適用がありません。

 

一方,被相続人の祖父母は,そのような特別ルールではなく,民法889条によって直接,相続人の地位(順位)があります。

そのため,自分よりも親等の近い者(亡くなった人の父母)がいなければ,必然的に相続人になります。

父母の相続放棄があると,父母は最初からいなかったと考えるため(前回の知識3),祖父母は相続人になり,孫の権利や義務を受け継ぎます。

 

そうすると,今回,祖父母が孫の借金の相続を避けるためには,自分も相続放棄をする必要がある,という結論になるのです。

 

ここまでの作文で疲れたので,だいぶ説明をはしょりましたが,ご理解いただけましたでしょうか。

 

 

さて,これまでの相続クイズを通じて,私が一体何をお伝えしたかったかというと,相続,特に相続放棄において,中途半端な知識は命取りになるということです。

(途中,意地の悪い出題をしたことに対する言い訳ではありません)

 

相続放棄は,自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内という短い期間に行わなければならず,かつ,一度相続放棄をする,またはそのチャンスを逃すと,やり直しやキャンセルは一切できません

 

裁判所に出す申述書の薄っぺらさ(A4用紙2枚)に驚かれることのある相続放棄の手続ですが,一見ただの紙切れに見えるその申述書には,これまでのクイズで触れたようなややこしい法律知識が,みっちりと詰まっている,こともあります。

 

ということで,この記事をお読みいただいている皆さん,特に前回と今回の出題でうっかり引っかかってしまった方は,相続やその放棄の問題に直面した際には,必ず当事務所にご相談いただければ幸いです。

 

相続まめ知識④ ~相続◯✕クイズ(2)

  2019/05/28    ブログ, 相続・遺言

こんにちは。粒来です。

 

前回に引き続き,今回も相続◯✕クイズです。

今回は,前回クイズで得た知識をもとに,さらなる難問にチャレンジしてもらうことになっていました。

ということで,まずは前回の3問の知識をおさらいします。

 

知識1.亡くなった人に子どもがいない場合,その人の親が相続人になる。

 

知識2.亡くなった人に子どもはいたが,既にその人(子ども)が亡くなっていた場合は,その子どものさらに子(孫)が相続人になる。

 

知識3.相続放棄をした人は,その相続において,最初から存在しなかったのと同じように取り扱われることになる。その結果,相続放棄をした人が存在したから相続人ではなかった人(次順位の相続人)が,繰り上がって相続人になる。

 

よろしいでしょうか。

では,これらの知識をフル活用して,次の問題にチャレンジしてみてください。

 

大事なことなのでもう一度。

上記の知識をふまえて,回答してください。

 

 

第4問(超上級)

死亡したおじいさんに大きな借金があったため,父(おじいさんの子)がその相続について家庭裁判所に相続放棄の手続をした。この場合,父の子(おじいさんの孫)は,自分も相続放棄の手続をしなければ,おじいさんの相続人として,おじいさんの借金を負うことになってしまう。

◯か✕か。

 

難しいので,ヒントです。

お父さんが相続放棄をしたということは,お父さんは最初から相続人でなかったことになりますね。そうすると,相続放棄をしたお父さんがいたために相続人でなかった孫は,どうなるでしょうか。

 

 

 

さて,正解は・・・

 

✕です!

残念でした。ひっかけ問題です(ノ∀`)アチャー

 

前回の知識をもとに考えると,父が相続放棄して最初から相続人でなかったことになると,父がいないことで相続人になる父の子(知識2)が,繰り上がって相続人になる(知識3)と思いがちです。そうすると,父の子も相続放棄をする必要があるように思えてきます。

 

しかし,知識2(代襲相続)について定められた民法887条2項は,実はこんな規定になっています。

 

第887条

2 被相続人の子が,相続開始以前に死亡したとき,又は第891条の規定(相続欠格:引用者注)に該当し,若しくは廃除によって,その相続権を失ったときは,その者の子がこれを代襲して相続人となる。

 

つまり,この規定の適用があるのは,被相続人の子が死亡,相続欠格または廃除によって相続権を失ったときだけで,相続放棄で相続権を失ったときは入っていません
そのため,父が相続放棄をした場合にはこの規定が適用されず,そもそも父の子(おじいさんの孫)には相続権が発生しないことになります。

相続権がないのだから,相続放棄をしなくても,おじいさんの借金を背負う心配はないのです。

 

 

皆さん,私の思惑どおり不正解だったでしょうか??

ほどよく私に対する不信感が芽生えたところで,今回はおしまいです。

次回は,◯✕クイズ最後の問題にチャレンジしていただきます。

 

今回,まんまと騙されてしまった方は,そのモヤモヤした気持ちを抱えたまま,次回の記事をお楽しみにお待ちください( ̄∀ ̄)