スタッフ日記

相続遺言教室~家族信託編~のお知らせ

こんにちは,高井です。

皆さま,「信託」という制度をご存知でしょうか。

これは,財産の管理を信頼できる人=家族などに託すことから,「家族信託」とも呼ばれており,今注目を集めている財産管理の手法です。

 

弊事務所では,「家族信託」をテーマにして

4月7日(土)午後1時30分から,かでる2・7(中央区北2条西7丁目)

で,セミナーを開催いたします。

 

セミナーでは,

・そもそも,家族信託って,どんな制度なのか

・家族信託を活用して,どのようなことができるのか

・遺言や生前贈与,成年後見制度とは,どんなところが違うのか

などについて,わかりやすく,ご説明いたします。

 

信託は,認知症対策や相続対策にも活用されており,

例えば,認知症などで判断能力が低下してしまい,自分で財産管理ができなくなった場合でも,事前に信託契約を結んでおくことで,自宅不動産やアパートの管理・処分について,契約で受託者としてお願いをした家族などに,不動産の管理等を任せることができます。

 

また,ご自身が亡くなった後の財産についても受託者に管理してもらうこともできます。例えば,自分が亡くなった後は,信託財産の中から,障害のある子の生活費の支払いに使ってもらうように受託者に依頼することもできます。

自分が亡くなった後の財産の使い方については,遺言では指定はできないため,自分が亡くなった後の財産については,障害のある子や妻の生活費に使ってほしいという希望がある方は,家族信託を検討してみるのも良いかと思います。

 

セミナーでは,家族信託の活用例を通じて,参加者の皆さまに,「家族信託」ってどのような制度なのかを,お伝えできればと考えております。

また,セミナー修了後は,ご希望に応じて個別相談も受け付けております。

 

セミナーにご興味のある方は,お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせ電話番号

0120-913-317

 

下の写真は,昨年12月2日(日)に開催した相続遺言教室です。

ご参加いただきました皆さま,どうもありがとうございました。

 

相続セミナー ご参加ありがとうございます

こんにちは,高井です。

10月14日(土)に,弊事務所主催の相続セミナーを「かでる2・7」で開催いたしまた。当日,ご参加いただきました皆さま,ご多忙のところ誠にありがとうございました。

 

 

セミナーでは,「司法書士業務の現場から見えてくる相続対策の必要性」と題して,実例をもとに相続対策の必要性をご説明しました。

内容は,円満な相続を実現する遺言書の作成ポイントをお伝えするとともに,遺言書だけでは対応できない場面として,認知症対策として,今注目の家族信託の活用例もご紹介させていただきました。

 

弊事務所では,定期的に皆様のご参考になるセミナーを開催しております。

随時ご案内しておりますので,ご興味を持って頂いた方は,是非ご参加いただければと思います。

 

 

 

メルマガ始めました!

  2017/03/16    お知らせ, ブログ, 相続・遺言

こんにちは。粒来です。

 

皆さまの相続問題に対する関心の高まりを受けて,数か月前から温めていた企画だったのですが,本日から毎月1回,弊事務所より『相続・贈与メールマガジン』を無料配信させていただくことになりました!

 

↑こんな感じです。

 

メルマガには,相続にまつわる話題やお役立ち情報を掲載した『相続・贈与マガジン』と,弊事務所のお便り『あいわ通信』を添付しており,法律知識のない方から,お仕事で相続問題に接する機会の多い方まで,幅広くお楽しみいただける内容になっています。

 

 

 

初回の本日は,今まで弊事務所とお取引があったり,弊事務所とご縁をいただいた方に配信させていただきました。

配信先にはご無沙汰していた方も多く,ご挨拶もなくいきなりメールを送り付けて怒られやしないかと多少の不安もあったのですが,幸い,反応は非常に良好でした。

早くも初日からメルマガを見てのご連絡をいただくこともでき,非常にありがたく,本当にうれしい限りです。

 

ただ,自分で言うのもなんですが私は叩かれて伸びるタイプなので,メルマガについてご意見等があれば,厳しいものでもご遠慮なくお寄せください。

 

 

また,今後,相続・贈与メールマガジンの配信をご希望の方がいらっしゃれば,

 

メールタイトルを「メルマガ配信希望」として,

メール本文に,

・お名前

・会社名

・配信を希望されるメールアドレス(PCまたはスマホ推奨)

・相続について知りたいこと,お悩みのこと(もしあれば)

 

をご記載のうえ,

 

担当司法書士 粒来(つぶらい)のメールアドレス

tuburai@aiwas.jp

 

まで,お気軽にご連絡ください。

 

賛否両論,ご連絡をお待ちしております!

 

相続セミナーのお知らせ

こんにちは,高井です。

弊事務所では,2017年4月16日(日)午後1時30分から

かでる2・7(中央区北2条西7丁目)で,相続セミナーを開催いたします。

第3回目の相続セミナーとなります。

テーマは,

~司法書士業務の現場から見えてくる相続対策の必要性~

と題して,実例をもとに,私(司法書士高井和馬)がお話をさせていただきます。

 

司法書士は,日常業務である不動産登記手続や裁判手続を通して,皆さまの「権利」,その中でも特に「財産権」を守ることを主な仕事としています。相続の場面では,不動産の名義変更などを通して,相続人の方に適切に遺産を承継するお手伝いをしております。また,最近では,成年後見制度を利用して認知症の方の財産管理をサポートする仕事も増えております。

 

しかし,これらの相続や成年後見の手続を進めるうえで,中には手続が円滑に進まないことがあります。例えば,一人の相続人の反対にあい遺産分割協議がまとまらないケースや,相続人の中に行方不明の方がいるケースなど,問題解決に非常に苦労する場面もあります。

このようなケースでは,実は,事前の相続対策さえとっておけば,手続きが迅速に終わり,費用もかからず,親族間の対立も起こることなく,円満・スムーズに相続手続が完了することがほとんどです。

 

そこで,この度のセミナーでは,普段,我々が業務を行う中で,事前に適切な相続対策をとっていなかったために,スムーズな相続を実現できなかったケースをご紹介することで,皆さまの今後の相続対策のご参考にして頂ければと思い,セミナーを開催させて頂くことにしました。

 

セミナーでは,相続対策の基本となる遺言について,円満相続を実現する遺言の作成ポイントをお伝えいたします。最近では,事前の相続対策の重要性も認識されつつあり,遺言を書く方が増えております。しかし,遺言もとりあえず書いておけば安心というわけではありません。そこで,セミナーでは,具体例をまじえながら,わかりやすく,遺言の作成ポイントをご説明いたします。

 

また,相続対策の基本は遺言を書くことですが,成年後見制度の制度上の限界から,遺言では対応できないケースもあり,最近では民事信託を活用するなど,新たな相続対策も注目されています。セミナーでは,このような遺言以外の相続対策の実例も,あわせてご紹介できればと考えております。

セミナー終了後は,ご希望に応じて個別相談を受け付けております。

 

セミナーにご興味のある方がいらっしゃいましたら,お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせ電話番号

0120-913-317

 

下の写真は,2月19日(日)に開催した相続セミナーです。

ご参加いただきました皆さま,どうもありがとうございました。

相続対策の革命『民事信託』

  2017/03/06    ブログ, 相続・遺言

こんにちは。粒来です。

 

たまに真面目な記事を書こうと思ったら,また文字だけで長文になってしまいました。

以下,根比べのつもりで気長にお読みいただければ幸いです。

 

さて,みなさんは「民事信託」という制度をご存知でしょうか。

 

ますます社会の高齢化が進み,「終活」など生前からの相続対策に注目が集まっていますが,遺言や成年後見の制度が普及するにつれ,その構造的な弱点や限界も明るみに出てきました。

 

遺言では,自分が決められるのは自分が亡くなった時の財産の承継方法だけで,その後に財産を引き継いだ方が亡くなった時のことまでは指定できません。そのため,例えば先祖代々の土地を自分の親族に連綿と受け継いでもらいたいと考えていたとしても,相続関係によっては必ずしもそれを実現できるとは限りませんでした。

 

また,成年後見では,本人(被後見人)の財産を他人のために使ったり,リスクのある運用の仕方をすることは原則的に許されません。そのため,本人がいくら自分の財産を家族のために使いたい(あるいは遺したい),そのために自分の財産を積極的に活用したいと考えていたとしても,ひとたび本人の判断能力が減退し,後見が開始してしまうと,その後の本人財産の使いみちは非常に限定的なものにならざるを得ませんでした。

 

そんな中,それらの不都合を解消できる画期的なスキームとして注目されているのが,冒頭に書いた「民事信託」なのです。

どのような制度かというと,まず,本来はあらゆる権利を一緒くたに内包している「所有権」(物を所有している人がもつ,その物を好きにしていい権利)を,法律上,「その物を管理・処分する権利」と「その物から利益を受ける権利」の2つに分けてしまいます。そして,そのうちの「管理・処分する権利」だけを,もともとの所有者が信頼できる第三者に託し,その管理・処分の結果発生した利益は,別に指定する「利益を受ける権利」を持つ方が受け取ることにするという制度です。

 

「管理・処分する権利」を託される第三者(=受託者)は,もともとの所有者(=委託者)との間で,その物(=信託財産)を自分のためでなく,「利益を受ける権利」をもつ人(=受益者)のために管理・処分するという固い約束(=信託契約)をします。

それにより信託財産は,委託者の手は離れますが,かといって純粋な受託者の財産でもない,いわば宙ぶらりんの財産という特殊な状況に置かれることになります。

 

その結果,その後に委託者が亡くなったとしても,信託財産は当然に委託者の相続人に承継されるものではなくなります。信託契約の中で,最初の受益者が死亡した時に備えて二次的・三次的な受益者まで決めておけば,遺言では実現できなかった,自分の財産を引き継いだ方が亡くなった後の,連続的な財産の帰趨まで指定できるようになります。

 

また,認知症等で委託者の判断能力が衰えてしまっても,信託財産を管理・処分する権限は既に受託者に移っていますので,受託者が元気でいる限り,受託者が信託契約の内容に従って(たとえそれが委託者の家族のためや,積極的でリスクを伴う運用方法だったとしても問題なく)信託財産の管理・処分の方法を決めていくことができます。

 

いかがでしょうか。実に画期的な制度だとは思いませんか!?

 

と,ここまで本当に根気強くお読みいただいた方はお察しかもしれませんが,この制度,すごく分かりにくいのが難点です。

今までの常識にとらわれない画期的な解決方法であるがゆえに,そこで使われる考え方もまた,今までの常識から離れた,非常になじみの薄い,分かりづらいものになっています。

 

しかし,今までの制度の不都合を解消できる以上,需要は必ずあるはずで,そういう分かりにくいのと引き換えにメリットの大きいサービスというのは,まさに専門家の腕の見せ所ではないかと思っています。

 

ただ,分かりにくいのは私にとっても同じなので,自分の準備不足から依頼者の方のニーズに応えられないなんてことになったら目も当てられません。

司法書士になってもうすぐ7年ですが,これからもずっとコツコツ勉強の日々が続きそうです。

 

民事信託について興味がおありの方は,ぜひ当事務所までご相談ください!

 

相続セミナー第2弾!

こんにちは。粒来です。

2月19日(日),当事務所の企画した相続セミナーの第2回を開催しました。

セミナーの内容は,前回同様,遺言書その他の相続対策の重要性について。

そして,講師を務めたのが,実は私,粒来でした。

 

↑ブログに自分の写真を載っけるなんて女子の特権だと思っていましたが,まさか自分がやる羽目になるとは。人生わからないものですね。

 

過去に,司法書士会の研修でも一度だけ講師を務めたことがあったのですが,その時は当事務所の他の司法書士2名と一緒だったため,一人で1時間以上の長丁場というのは今回が初めてでした。

今回のセミナーでは,並み居る大観衆の前(嘘です。話を盛りました)で,聴講者の方々がどのように考えているのか反応を見ながら(嘘です。そんな余裕はありませんでした)話すことができ,非常にいい経験になりました(これは本当です)。

反省点や改善点もたくさんあったので,それらを今後に活かし,次回はもっともっと聞きやすく,分かりやすい講義を心掛けたいと思います。

 

当日,お忙しいところセミナーに足を運んでいただきました皆さんには,この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

 

当事務所では,今後も定期的に,皆さんのお役に立てるような内容のセミナーを企画,開催していく予定です。

興味がおありの方は,お気軽に当事務所までお問い合わせください。

 

相続手続のルール変更と遺言の重要性

  2017/01/11    ブログ, 相続・遺言

あけましておめでとうございます。粒来です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

新年1回目の当番ということで,今回はまじめに,少しでも皆様のためになる情報を提供させていただきたいと思い,相続手続について書くことにしました。

以下,写真もなく長文ですが,お付き合いいただければ幸いです。

 

昨年の12月19日,最高裁判所で,相続手続に関し,従来のルールを変更する重要な決定がありました。

なお,最高裁判所は,言わずもがな日本で最も権威のある裁判所で,ここで新しい判断がされるということは,実務上,新しい法律ができるのと同じくらいの意味があります。

 

決定の内容は,「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる」というものでした。

 

今までは,共同相続された普通預金や通常貯金は,不動産や有価証券などと違い,遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を決める話し合い)がなくても,各相続人が独自に自分の取り分を主張できることになっていました。

そのため,相続人の意見が一致せず遺産分割協議がまとまらない場合でも,最悪,一部の相続人が自分の取り分だけを請求すれば,(金融機関の抵抗はありましたが)最終的には預貯金の一部だけの払い戻しを受けることができていました。

 

しかし,今回の決定により,今後は相続人間で協議がまとまらないければ,時間と労力のかかる家庭裁判所の調停や審判までして遺産分割をまとめないと,払い戻しを受けることはできなくなりそうです。

 

つまり,今回の決定により,相続人の足並みが揃わない一部のケースにおいては,相続手続きを進めることがより一層難しくなりました。

 

しかし,自分の推定相続人同士の不仲等で,協議がまとまる見込みが薄いことが生前から分かっているのに,何も対策ができないかというと,そうではありません。

遺言を使って,自分で自分が亡くなった後の財産の分け方を決めてしまえばよいのです。

 

遺言では遺産分割方法の指定(遺産の具体的な分け方を,遺言者が事前に決めてしまうこと)ができ,これをしておけば,遺言者が亡くなった後で,相続人が遺産分割をまとめる必要がなくなります。

今回の決定は,遺産分割の対象となる(相続人全員が口を出せる)財産をできる限り広くすることで,相続人間の公平を図ろうというものなのですが,そもそもそこまでして相続人間の公平に配慮しなければならないのは,被相続人(亡くなった方)が,自分が亡くなった後の財産の処分方法を決めていないからです。

相続財産は被相続人のものですから,その人が決めた分割方法であれば,多少の不公平があっても,「自分の財産をどう処分しようと自分の勝手」ということで正当化できます。相続人にとっても,被相続人が決めておいてくれた遺産分割の方法に従って手続を進めるのと,利害関係人同士の話し合いで手続を進めるのとでは,大きく気持ちが違うはずです。

 

今回の最高裁決定は,上記のとおり一部のケースにおいて相続手続を難しくするものではありますが,同時に相続対策としての遺言の重要性をさらに高めるものではないかと思います。

 

今回の件に限らず,遺言を残しておくことで回避できる相続手続のリスクや手間はたくさんあります。遺言の作成を検討されていたり,詳しく話を聞いてみたいという方は,ぜひ当事務所までご相談ください。

 

相続・遺言 セミナー&相談会

  2016/12/15    相続・遺言

こんにちは,高井です。

弊事務所では,2017年1月29日(日)午後1時30分から

かでる2・7(中央区北2条西7丁目)で,相続セミナーを開催いたします。

タイトルは,

「相続・遺言 セミナー&相談会」

~司法書士業務の現場から見えてくる相続対策の必要性~

という内容で,私と所長の椎名がお話をさせて頂きます。

 

司法書士は,日常業務である不動産登記手続や裁判手続を通して,皆さまの「権利」,その中でも特に「財産権」を守ることを主な仕事としています。相続の場面では,不動産の名義変更などを通して,相続人の方に適切に遺産を承継するお手伝いをしております。また,最近では,成年後見制度を利用して認知症の方の財産管理をサポートする仕事も増えております。

 

しかし,これらの相続や成年後見の手続を進めるうえで,中には手続が円滑に進まないことがあります。例えば,一人の相続人の反対にあい遺産分割協議がまとまらないケースや,相続人の中に行方不明の方がいるケースなど,問題解決に非常に苦労する場面もあります。

このようなケースでは,実は,事前の相続対策さえとっておけば,手続きが迅速に終わり,費用もかからず,親族間の対立も起こることなく,円満・スムーズに相続手続が完了することがほとんどです。

 

そこで,この度のセミナーでは,普段,我々が業務を行う中で,事前に適切な相続対策をとっていなかったために,スムーズな相続を実現できなかったケースをご紹介することで,皆さまの今後の相続対策のご参考にして頂ければと思い,セミナーを開催させて頂くことにしました。

 

セミナーでは,相続対策の基本となる遺言について,円満相続を実現する遺言の作成ポイントをお伝えいたします。最近では,事前の相続対策の重要性も認識されつつあり,遺言を書く方が増えております。しかし,遺言もとりあえず書いておけば安心というわけではありません。そこで,セミナーでは,具体例をまじえながら,わかりやすく,遺言の作成ポイントをご説明いたします。

 

また,相続対策の基本は遺言を書くことですが,成年後見制度の制度上の限界から,遺言では対応できないケースもあり,最近では民事信託を活用するなど,新たな相続対策も注目されています。セミナーでは,このような遺言以外の相続対策の実例も,あわせてご紹介できればと考えております。

セミナー終了後は,ご希望に応じて個別相談を受け付けております。

 

セミナーにご興味のある方がいらっしゃいましたら,お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせ電話番号

0120-913-317

 

 

 

 

その遺言で大丈夫ですか?

  2016/11/20    相続・遺言

こんばんは,高井です。

 

相続の相談を受けていると,3年くらい前から,遺言に関する相談が増えているように感じます。

 

相談者のお話をきいていると,自分の親の相続のときに相続トラブルを経験された方もおり,自分が亡くなったときの相続手続の際には,自分の子供たちには相続のことで迷惑をかけたくないという理由から遺言を作ろうと考えた方もいらっしゃいました。

また,知人の遺産トラブルの話を見聞きした方も,予防策として遺言書の作成を検討されたという方もいらっしゃいました。

 

このようなこともあり,事前の相続対策の必要性を感じ,遺言を作ろうと考える方が増えてきているんではないかと思います。

 

では,遺言を書いておけば,それで相続対策としては万全で,安心できるのでしょうか?

 

過去に当事務所に持ち込まれた遺言で,このような手書きの遺言がありました。

 

「私の土地建物等一切を〇〇〇〇に譲渡する」

 

遺言自体は,全文・日付・氏名が遺言者により自書されており,印鑑も押されていたため,自筆証書遺言の形式を満たした有効な遺言書です。

検認期日では,相続人から特に意見も出なかったため,遺言自体が無効になるという心配もありませんでした。

ただし,この遺言書は,受遺者(=財産を受け取る人)が相続人以外の方で,遺言書に受遺者の名前しか書かれていませんでした。

 

管轄の法務局にこの遺言書を持っていくと,受遺者の名前しか書いていないので,受遺者の特定が不十分のため,登記はできないと言われました。

つまり,こういうことです。

例えば,「高井和馬」という同姓同名の人物は,日本全国に何人もいる可能性があります。遺言に書いてある「高井和馬」と,登記申請人の「高井和馬」が同一人物なのか,この遺言の記載だけでは特定ができないため,登記はできないということなのです。

 

例えば,遺言の記載が,「甥の高井和馬」とか,「高井和馬(住所:札幌市北区北32条西4丁目1番7号)」というように,もう少し特定がされていれば,問題が無かったのです。

また,遺言書に名前しか書いていない場合でも,受遺者の名前が,被相続人(遺言者)の戸籍の中に出てくれば,特定をできたのかもしれませんが,今回は,先に亡くなった妻の甥のため,遺言者の戸籍をとっても名前が出てきません。

 

この事案では,どのように手続きを進めようか悩みました。

 

遺言者の相続人全員から印鑑をもらい,誰かに代表して相続してもらい,その方から遺言の受遺者に贈与してもらうのがよいのか・・・

 

しかし,このケースでは,兄弟姉妹が相続人であり,かつ,甥・姪にまで代襲相続や数次相続が発生していたため,20人以上の相続人が全国各地にいました。

とても,全員からハンコを集めるのは難しく,しかも,奥さんの側の甥に贈与してもらうなど,現実的ではないと考えました。

 

そこで,遺言執行者を被告に裁判を起こして,判決文をもとに登記申請をしようかとも検討しました。

ところが,管轄の法務局に登記の打ち合わせに何度も足をはこぶ中で,他の書類とあわせて遺言書を読むと,なんとか受遺者を特定できるということで,登記申請をすることができました。

このケースでは,時間はかかりましたが,無事に遺言のとおり登記手続を完了することができて,ほっとしています。

 

このように,遺言の内容が不明確だと,場合によっては,特定性が不十分で執行不能になることがあるので,注意が必要です。

当然のことですが,ご本人が亡くなった後には,遺言の内容を説明することはできません。

したがって,遺言書を残すときは,誰が読んでも一通りの解釈しかできない遺言を作ることが重要となります。

 

 

遺言を書く方が増えています

  2016/11/19    相続・遺言

こんにちは,高井です。

 

普段,相続の手続きのお手伝いをさせて頂いていると,ときには,円滑・スムーズに手続きが進まないときがあります。

例えば,一人の相続人の反対にあい遺産分割協議がまとまらないケースや,相続人の中に行方不明者がいるケースなど,事前に相続対策をとっておけば,こんなに相続手続に苦労しなかったのに・・・という事案にぶつかり,問題解決に非常に苦労する場面があります。

 

これらのケースでは,実は,事前の相続対策さえとっておけば,手続きも迅速に終わり,費用もかからず,親族間の対立も起こることなく,円満に相続手続が完了することが多いです。

 

このようなこともあってか,最近では,事前の相続対策の重要性が認識されつつあり,遺言を書く方が増えております。

 

では,なぜ,遺言は書いておいたほうが良いのでしょうか?

 

それは,遺産分割協議を省くことができるからです。

遺言があって,誰が何を相続するのかが明確になっていれば,相続人による遺産分割協議を省くことができ,円満で迅速な相続手続を実現することができます。

 

遺言が無い場合は,どのような手続きになるのかというと,

相続手続を進めていくには,遺産分割協議を行って,誰が何を相続するのかを決めなければなりません。しかも,遺産分割協議は多数決ではなく,相続人の「全員一致」がなければ成立しません。

 

当事者間で遺産分割協議がまとまらない場合は,最終的には,家庭裁判所の「審判」で遺産分割が決定されることになります。家庭裁判所の審判官は,すべての事情を総合考慮して妥当な遺産分割内容を決定することができるとされています。

しかし,遺産分割の審判には重大な制限があり,法定相続と異なる審判をすることができないのです。

 

ここで,この遺産分割の問題を考えるにあたって,一つの事例をご紹介したいと思います。

 

父親が死亡して,相続人として,長男・二男・三男の子供がいます。

法定相続分は,それぞれ3分の1ずつです。

そして,主な遺産は,自宅不動産だけです。

 

このような状況であれば,相続分どおりに分割することは非常に難しくなります。

父親と長年同居して老後の面倒をみてきた長男は,当然,自分が自宅不動産を相続できると思っています。

しかし,二男や三男が相続分を主張した場合は,長男が父親の面倒を長年,献身的にみてきたとしても,長男は,自宅不動産を取得するかわりに,二男と三男にそれぞれ3分の1相当額の代償金を支払わなければなりません。

また,長男が代償金を用意できなければ,最悪,自宅を売却して,自宅を売ったお金を相続分に従って分けることになってしまいます。

さらに,これが,店舗兼住宅で,この不動産で長年商売をされていた場合は,もっと大変なことになってしまいます。

 

どうして,このようなことが起こるのかというと,それは,民法が定める相続分が,相続財産と合っていないことが大きな原因なのです。

遺産が,現金と預貯金のみであれば,法定相続分どおりに分けることもできますが,ほとんどの相続のケースでは,相続人全員の要求を満たす資産構成になっておらず,遺産分割の話し合いがこじれて,長期化したり,時には争いが生じたりするケースもあります。

 

一方,遺言があって,誰が何を相続するのか明確になっていれば,相続人による遺産分割協議を省くことができます。

その結果,相続人間の争いを防ぐことができ,円満で迅速な相続手続を実現することができるのです。

 

遺言は,民法の定める相続分に拘束されることなく,自由に相続分を指定することができます。揉めないための相続を実現するためには,被相続人が生前に遺言書で,法律で定める相続分を資産構成に応じて動かし,円満に相続できるように相続開始時の設計図を作成して示す必要があるのです。

 

例えば,先ほどの事例では,遺言書で「不動産は長男に相続させる。その他の預貯金を含む一切の財産は,二男・三男に2分の1ずつ相続させる。」という遺言を残しておけば,遺産分割協議自体を省くことができ,兄弟間での争いを予防することができます。

さらに,遺留分対策として,長男を受取人とする生命保険に入っておけば,万が一遺留分減殺請求を受けたときも,保険金でまかなうことができます。

 

法律上,遺言書を作成し,相続対策をとることができるのは,「被相続人」だけです。

そのため,残された相続人が円満な関係を維持していくためにも,遺言書は必要になってくるのです。