スタッフ日記

司法書士のお仕事紹介~商業登記編④ まとめてお得!商業登記申請(後編)~

  2021/06/11    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

今回は, 前回記事 に引き続き,商業登記で登録免許税を節約する工夫についてご紹介します。

 

ポイントは,商業登記にある以下のルールです。

 

【ルール1】

商業登記の場合,あった出来事の種類にかかわらず,いろいろな登記をまとめて1件で申請すること(一括申請)が原則

 

【ルール2】

商業登記の登録免許税は,あった出来事(登記事項)ごとにカテゴリー(課税区分)が決められており,1件の登記申請の中に同一課税区分の登記事項が複数あった場合でも,かかる登録免許税は1回分で済む

 

これを,前回の事例にあてはめてみます。

 

前回の事例は,

(1)令和3年4月10日 取締役Aさんが辞任

(2)令和3年4月16日 株式会社Aには監査役を置かないこととし,同時に監査役Bさんが退任

(3)令和3年4月23日 会社名を「株式会社A」から「株式会社C」に変更

というものでした。

 

この事例の場合,(1)の取締役の辞任と(2)の監査役の退任は,いずれも「役員変更」で同一課税区分です。

同様に,(2)の監査役設置会社の定め変更と(3)の商号変更も,実は「その他の変更」で同一課税区分です。

 

したがって,(1)~(3)の登記申請を順次3件ではなく,まとめて1件で申請すれば(上記【ルール1】),重複する課税区分の登記事項が1回分の計算で済みます(上記【ルール2】)。

結果,かかる登録免許税は,「役員変更」の1万円と「その他の変更」の3万円の,合計4万円で済むようになります。

 

ご理解いただけましたでしょうか。

 

さて,ここからは当ブログお決まりの展開ですが。。。

本記事をご覧になり,情報量の多さと面倒くささに困惑しているあなた(特に会社の総務担当の方),私が何を申し上げたいかというと,

 

悪いようにはしないので,観念して登記は司法書士に任せてください

 

ということです。

 

登記はやることの形が決まっている業務なので,インターネット環境と根性さえあれば,自力で登記申請までたどりつくことはおそらく可能です。

しかし,数年に一度の登記のためにネット検索と書類作成に時間を取られた結果,本業の時間が削られ,あげく申請の補正のために何回も法務局に呼ばれるなんてことになれば,会社にとってはむしろ損失ではないでしょうか。

そこまで頑張って登記完了までたどり着いたとしても,今回の事例のように,本来低く抑えられたはずの登録免許税を気付かずに多く納付してしまったりしたら,もう目も当てられません。

 

司法書士にご依頼をいただければ,登記申請書はもちろん,議事録などの添付書類も司法書士が作成します。当然,費用負担についても(合理的な範囲で)なるべく低く済むようアドバイスをします。

また,万一,申請の補正があったとしても,依頼者にバレないようにこっそり司法書士が法務局に行くので安心です。

 

でも,お高いんでしょう?と思ったあなたも,ご安心ください。

商業登記の場合,ほとんどのケースでは,司法書士の報酬よりも,実費の登録免許税の方がよっぽど高額です。

つまり,自力の登記申請でしくじって税金を余分に納めるくらいなら,最初から司法書士に依頼した方が,時間的にも経済的にも断然お得なのです。

 

ネット全盛のこのご時世,定型業務である登記を生業とする司法書士がしぶとく生き残っている理由について,少しでも思いをはせていただければ幸いです。

 

最後に。

本記事をご覧になっていただき,「まとめて申請した方が得なら,登記は何年かにいっぺんまとめてすればいいや。」と思ったそこのあなた。
次回記事では,そうは問屋が卸さない,恐ろしい「登記懈怠」のペナルティについてご紹介します。

 

どのような記事か,お楽しみにお待ちくださいΨ(`∀´)Ψヒヒヒ

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編③ まとめてお得!商業登記申請(前編)~

  2021/05/07    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

前回記事 では,会社の設立にかかる登録免許税の負担とその軽減方法についてご紹介しました。

しかし,商業登記で登録免許税の負担が大きいのは,会社設立の場面に限った話ではありません。

 

最も登記する機会の多い役員変更こそ1回あたり1万円で済みますが(資本金1億円以下の場合),それ以外の場合,登記する事項ごとに3万円かかるというのが多いパターンです。

(参考:登録免許税の税額表(国税庁HP))

 

たとえば,ある会社に本店の移転と事業目的の変更があった場合,登記をする際の登録免許税は3万円✕2=6万円となります。

これに役員変更が加われば+1万円で,登録免許税だけで7万円かかります。

 

多くて年数回程度とはいえ,特に小規模な会社においては,登記のたびに数万円というのは馬鹿になりません。

このような商業登記の登録免許税の負担を軽減する方法が,今回の記事のテーマです。

 

どういうことか,事例でご説明します。

【事例】

資本金100万円の「株式会社A」という会社で,次の出来事がありました。

(1)令和3年4月10日 取締役Aさんが辞任

(2)令和3年4月16日 株式会社Aには監査役を置かないこととし,同時に監査役Bさんが退任

(3)令和3年4月23日 会社名を「株式会社A」から「株式会社C」に変更

 

上記の(1)~(3)の登記を順次3回で申請した場合,登録免許税の金額は

(1)で1万円(役員変更)

(2)で3万円(監査役設置会社の定め変更)+1万円(役員変更)=4万円

(3)で3万円(商号変更)

合計8万円となります。負担が大きいですね。

 

しかしこの事例,実はある簡単な工夫をすることで,登録免許税が半額の4万円で済むのです。

どういうことかというと。。。

 

長くなったので,続きは次回の記事にします( ´_ゝ`)

お楽しみに!

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編② 会社設立と「特定創業支援等事業」~

  2021/04/13    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

今回の記事は,時節がら事業者の皆様の関心が高いと思われる,税金の負担軽減のお話です。

 

唐突ですが,会社というのはどうやったら誕生するか,ご存じでしょうか。

法律では,人やお金が集まっただけでは,いくら事業の規模が大きくなろうと会社にはなりません。

設立の登記をして,はじめて会社が成立することになっています。

 

その会社の設立登記の際に一番多くかかるお金は,登記の時に法務局に納付する,登録免許税という税金です。

(司法書士にかかる金額は,たとえば株式会社の設立の場合,費用全体の3分の1以下に過ぎません。)

 

登録免許税の額は,設立時の資本金の額に0.7%をかけて計算することになっています。

そのため,一応は,設立の規模が小さい会社ほど,かかる税金も少なくなる仕組みになっています。

しかし,上記の計算結果が,株式会社の場合15万円,合同会社の場合は6万円を下回る場合,登録免許税の金額はそれぞれ15万円,6万円とされます。

つまり最低でも,株式会社を作る場合15万円,合同会社の場合も6万円は税金がかかることになっています。

 

事業をスタートする際には,いろいろなことにお金が必要です。

なけなしの司法書士報酬をゴリゴリ値切られる方がいらっしゃるくらいなので,節約できる費用は可能な限り節約したいというニーズは多いはずです。

 

そこで今回ご紹介するのが,この負担の重い登録免許税を大幅に軽減できる,「特定創業支援等事業」の制度です。

 

この制度を利用すると,端的に,上記の登録免許税を半額にすることができます。

つまり,少なくとも株式会社で7万5000円,合同会社でも3万円,費用を節約することができます。

特に株式会社の7万5000円オフは大きいですね。

浮いたお金で,事業に使うパソコンの1台くらいは買えそうです。

 

どうやって軽減の適用を受けるかというと,所定の創業支援(セミナーの聴講等)を受け,自治体からその証明書をもらったうえで,設立登記の際に証明書を添付する方法によります。

 

自治体の実施する制度ということで,

(1)そもそも制度が実施されているかどうか,自治体ごとにばらつきがあること

(ちなみに,我らが札幌市では実施されています→https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/plaza.html

(2)設立する会社の所在地と同じ自治体で創業支援を受ける必要があること

などの注意点があります。

また,対象となる創業支援は継続的に受講する必要があるものも多く,そうすると必然的に証明書をもらえる(=設立登記ができるようになる)までに時間がかかることになります。

 

会社設立の依頼の際には,とにかく急いで登記をしてほしいと言われることも多く,そのような方にとっては利用しにくい制度かもしれません。

しかし,「創業支援」と銘打つくらいなので,支援の内容はいずれも創業後の事業に有益なものになっているのではないかと思います。

創業のための勉強ができて,かつ費用も安く済むとなると,大いに活用すべき制度ではないかと思います。

時間にゆとりをもって会社設立に取り組むことができる方は,是非,ご一考いただければ幸いです。

 

およそ税金一般に言えることですが,払う場面では黙っていても有無を言わさず持っていかれる一方で,戻ってきたり減免されたりする場面では,こちらが積極的に調べないと何も教えてくれません。

(決して,個人的な恨み言ではありません。)

 

そんなわけで,次回も引き続き,商業登記における登録免許税の節約の方法についてご紹介していきたいと思います。

 

どのような内容か,お楽しみにお待ちください。

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編① 総論~

  2021/02/22    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

今回からは,司法書士の取り扱う仕事のうち,「商業登記」の業務についてご紹介していきます。

 

簡易裁判所での訴訟業務について代理権が与えられて20年近くが経ちますが,依然として「司法書士=登記の専門家」というイメージが非常に強くあるように思います。

 

事実,取り扱う事件全体の件数をみても,司法書士の主戦場が圧倒的に登記業務であることは間違いないのですが,そこで一般の方がイメージされる登記業務とは,主に不動産についてのもの(自宅の新築,住宅ローンの借り換えや完済など)ではないでしょうか。

しかし実は,司法書士が取り扱う登記には,不動産登記だけでなく,商業登記というものもあります。

 

商業登記とは,ざっくりいうと会社や法人に関する登記です。

その会社が何を事業目的とするもので,どこにあり,誰が役員なのかなどは,すべて法務局に届け出て一般に公示する制度となっています。

(一度は名前を聞いたことのある有名な会社についても,法務局に行けば,誰でも登記されている情報を確認することができるようになっています。)

 

地獄の受験生時代のことはあまり思い出したくありませんが,司法書士の資格試験でも,実体法である会社法とあわせると,マークシートの択一問題が16問(70問中)+記述式試験が1問と,会社や商業登記についての問題は試験の多くのウェイトを占めており,それだけ司法書士制度上も,商業登記業務は重視されています。

 

商業登記が不動産登記と大きく違うのは,登記をすることが義務とされていることにあります。

不動産登記制度の目的は,「国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資すること」(不動産登記法第1条)とされています。

私人の権利保護が主な目的なので,登記による保護を受けるかどうかはある程度自由(自己責任)となっています。

 

一方で,商業登記制度の目的は,「商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資すること」(商業登記法第1条)なっており,主な目的は公益的なもの(会社などに対する世間一般の信用)となっています。

そこで,会社に関する登記をすることは当事者の義務とされており,後日別の記事で詳しく触れますが,登記をしないことに対し,過料(罰金みたいなもの)まで準備されています。

 

そんな商業登記制度について,今回から,何回か連載をしていきたいと思います。

 

今回の記事は制度に関する総論的な説明だったため,どうしても無味乾燥な内容になってしまいました。

しかし,次回からは,登記をしないことに対するペナルティ知って得する登録免許税の節約方法など,少しでも実践的で興味をもっていただける内容にしようと考えています。

 

どのような記事か,お楽しみにお待ちください。

 

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編②~

  2019/12/03    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

前回の記事 は,不動産決済の場で平静を装っている司法書士が内心実は神経をすり減らしているというお話でしたが,今回は,そんな不動産決済の場で,実際にあった怖い話です。

 

前回,司法書士は不動産取引において「人」「物」「意思」の確認をしているとご紹介しました。

このうち「人」の確認は,一般的に,当事者ご本人しか持ち得ない身分証の原本の提示を受け,疑わしい点がないか確認する方法で行います。

しかし,不動産は高額なので,時折,売却の権限がないのに売主になりすまし,売買代金を騙し取ってやろうと企む輩が出現します(積水ハウス事件が記憶に新しい,いわゆる「地面師詐欺」)。

 

司法書士も,明らかな書類の偽造を見逃したりすると当然ペナルティーを受けるため,見た目が本物っぽいか以外にも,何カ所か確認のポイントを設けて身分証などをチェックしています。

 

そんな中,ある不動産取引の場で,売主さんからご本人確認資料として運転免許証の提示を受けました。

提示された免許証がゴールドでなく青色だったので,この人はいったいどんな交通違反をしたんだろうと,本人確認とは全然関係のない余計なことを考えていたところ,ふと,免許証の有効期限が交付の5年後であることに気がつきました。

 

運転免許証をお持ちの方はご存じかと思いますが,一般的に,ゴールド免許は更新が5年おきで済みますが,青色の免許証の更新は5年ではなく3年です。

したがって,青色の免許証の有効期限は,ふつうは3年間のはずなのです。

 

冒頭にも書きましたが,不動産決済の場で,司法書士は基本的に平静を装うものです。

例にもれず私も平静を装っていましたが,内心は?の嵐です。

これがもし偽造免許証の詐欺事案だったとしたら,関係当事者が大きな損害を被ってしまいます。

そして,こんなケアレスミスを看過した私にも,責任がないはずがありません(←ここが重要)。

 

結局この時は,その場でインターネットを検索し,警察署のウェブサイトに『過去5年間に軽微な違反(3点以下)1回の方は,青色免許証でも有効期間が5年間になる』と紹介されているのを発見しました。

それとなく売主さんに事情を聞いてみたところ,上記の情報と同旨のお話をされたので,ほっと一安心し,不動産決済はつつがなく終わりました。

(ドタバタしたのは,私の内心だけ)

 

司法書士の仕事は不動産登記の専門知識だけでなく,こんな一般常識も必要なのかと痛感した1日でした。

 

以上,今回は不動産決済で実際にあった怖い話をご紹介しました。

最後までお読みいただいた方の中には,「司法書士はその程度のエピソードで怖いとか騒いでいるのか。」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし,実際,司法書士人生で最もビビった時の話は,とてもじゃないですがこんなブログで笑い話にできるような話ではなかったので,書けなかっただけです。

 

お察しいただければ幸いです。

|ω・`)チラッ

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編①~

  2019/10/25    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

140万円以下の争いごとについて交渉や裁判ができるようになるなど,昔に比べて司法書士が活躍できる場は増えましたが,今も昔も,司法書士のメイン業務といえば不動産登記です。

 

その中でも花形といえるのが,不動産の売買の場に立ち会い,その場で当事者の意向や登記の必要書類を確認して代金決済のゴーサインを出すという,いわゆる「立会業務」です。

 

司法書士は決済の場で,来ているのが本当に当事者本人か(ヒトの確認),売買の対象になっている不動産や当事者の認識に間違いがないか(モノ・意思の確認)をチェックし,かつ,登記申請に必要な書類がすべて揃っているかを確認します。

そして,それらの確認が済んだら,「代金の決済を行ってもOKです」と当事者に宣言します。

そうすると,司法書士が言うなら大丈夫だろうということで,銀行から買主,買主から売主へと,場合によっては億を超えるお金が動きます。

 

したがって,代金決済が済んだ後で,「実は,司法書士の確認不足で登記ができませんでした(๑´ڡ`๑)テヘ」なんてことになると,本当にシャレになりません。

融資した金融機関を出禁になるのはもちろんのこと,場合によっては司法書士のミスで損をした取引当事者から,賠償を迫られる可能性もあります。

 

そのため,決済当日に絶対に間違いが起こらないよう,司法書士は立会の前から,確認に確認を重ねて準備をしています。

 

代金の決済自体は1時間もあれば終わる(しかも大半は待ち時間)あっけない手続であるにも関わらず,司法書士がその場で預かるお金が少ない場合でも十数万円と高額であることから,不動産取引の最後になっていきなり現れ,多額の報酬をひっつかんで高笑いを残して消えていく,みたいなイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが,それは大きな誤解です。

 

その決済に至るまでに,司法書士は一撃必死のリスクに震えながら(言い過ぎました),入念な準備をしています。

そして,司法書士が預かるお金も,多くは法務局に納める税金,つまり実費です。

 

不動産決済に臨む司法書士は,水面を優雅に進んでいるように見えて,水面下で懸命に足ヒレを掻いている白鳥みたいなものなのです。

 

資格自体の認知度が低く,他士業(特に,名前が似ている行政書士の先生)と間違われることの多い司法書士ですが,その仕事の一端をご理解いただけたなら幸いです。

 

次回の記事では,そんな緊張感あふれる立会の場で,本当にあった怖い話をお届けします。

 

乞うご期待!

 

実質的支配者(←ただならぬラスボス感)

  2019/07/31    ブログ, 登記

こんにちは。粒来です。

 

某芸能事務所の闇営業問題のおかげで,「反社会的勢力」という言葉の注目度が一気に上がったように思います。

 

今回はこれにちなんで,司法書士と反社会的勢力との関わりについて,ご紹介させていただきます。

(誤解を招く表現でしたが,そういう意味ではありません。)

 

ちょっと前に,株式会社などの設立時の定款認証手続(会社の基本的なルールを設立前に公証人にチェックしてもらう)に一部変更がありました。

具体的にどういう変更だったかというと,会社の「実質的支配者」が反社会的勢力に属する人物でないかを定款認証時に確認して,該当する法人の定款を認証しないことで,反社会的勢力による法人の設立を妨げるという枠組みが,新たに作られました。

 

要するに,会社設立の手続にフィルターをひとつ設け,ヤク◯(やくまる)さんの悪だくみのための会社を設立しにくくしたということです。

 

規定の内容は,このようになっています。

 

公証人法施行規則

第十三条の四 公証人は,会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には,嘱託人に,次の各号に掲げる事項を申告させるものとする

(以下略)

 

公証人に申告する義務があるのは,定款認証の「嘱託人」です。

そして,司法書士が会社の設立登記を行う場合,多くは,実質的支配者本人ではなく,司法書士が定款認証の嘱託人となります。

つまり,司法書士が公証人に,「今回の設立にかかる会社の実質的支配者は,反社会的勢力ではありません」と宣言する義務を負うことになりました。

 

制度趣旨だけみると素晴らしい制度です。しかし,問題は実効性です。

なじみの方に法人設立を依頼されることもないわけではありませんが,会社設立の依頼者は,どちらかというと初対面の方が多いです。

司法書士は警察や公証人と違い,反社会的勢力に属する人物のリストを持っているわけではありません。目の前の依頼者が反社会的勢力でないことを確認する方法となると,結局のところ,その人の申告頼みになります。

(当たり前ですが,見た目で判断するわけにはいきません。)

 

しかし,司法書士に問われて「私,反社会的勢力です!」と堂々と申告してくれる人は,そもそも隠れ蓑の法人設立など行いません。

詳しく書きませんが,この制度には他にも抜け道があり,残念ながら今回の改正は,司法書士や公証人の責任や手間を重たくしただけの,ザル法の匂いがぷんぷんしています。

 

なお,新しい手続を経て定款認証を受けた後には,公証役場に請求すると,「申告受理及び認証証明書」というものを,無料で発行してもらえるようにもなりました。

これは,当該会社の実質的支配者が反社会的勢力でないことについて,公証人のチェックをクリアしたことの証明書であり,会社設立後に法人名義の預貯金口座を開設する際に,金融機関に提出するなどの活用方法が想定されているようです。

 

 

月末で雑務に忙殺されているところに連日の猛暑が重なり,内容がだいぶ愚痴っぽくなってしまいました。

アメトーーク!でも見て気分転換して,次回はもう少し明るい話題を提供できるよう頑張ります。

 

玄人好みの「合同会社」

  2018/01/10    ブログ, 司法書士全般, 登記

あけましておめでとうございます。粒来です。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

最近,といっても昨年の話ですが,ご依頼をいただいて「合同会社」の設立登記を行いました。

会社=株式会社というイメージが強いので耳慣れない方もいらっしゃるかと思いますが,日本で「会社」と呼ばれるものは4つの形があり,合同会社もそのうちのひとつです。

平成18年の法律改正で新しくできた形なのですが,特に起業して間もない小規模な事業や,顧客や取引先との信頼関係が十分にある方が会社を設立する場合,株式会社よりもメリットが多いケースも多く,弊所でもご依頼が増えています。

 

株式会社と合同会社には,おもに次の違いがあります。

 

1.会社に対する発言力

株式会社は,「お金を出したら口も出す」を地で行く組織形態です。出資者(お金を出した人)は会社の株主として,出資金額に応じた発言力をもちます。

これに対して合同会社では,出資者(社員)の発言力は,会社独自のルールで自由に決めることができます。単純に社員の頭割りによる多数決にすることもできますし,出資の金額が少なくても実力のある特定の社員の発言力だけを高めることもできます。

 

2.業務執行(会社の運営)を誰がするか

株式会社は,多数の出資者から広くお金を集めて事業を行う前提で組織設計されているので,出資者(株主)自身ではなく,株主が多数決で選んだ取締役が会社を運営します。

一方,合同会社は,仲間内でお金を出し合って事業を行うという前提で組織設計されているため,原則として出資者(社員)がそのまま会社を運営します。

 

3.登記費用

これが地味に大きいところなのですが,会社設立にかかる登記費用は,株式会社の場合,実費だけで最低20万円はかかります。一方,合同会社では,必ずかかる実費は6万円程度です。

また,会社設立後も,株式会社では最長でも10年に1度,役員の変更登記を行う義務があり(メンバーに変更がなくても登記する必要がある),これを怠ると裁判所から罰金(過料)を課せられます。しかし,合同会社では社員に任期がないため,定期的な役員変更登記は不要です。

 

合同会社の弱点としては,一般の認知度やイメージで株式会社に劣ることが挙げられます。しかし,身近な例でいうと,スーパーマーケットの西友,インターネット通販のAmazonの日本法人や,弊所の司法書士 及川が愛してやまないアップル社(iPhoneの会社)の日本法人も合同会社です。あとは調べてびっくりしましたが,アイドルグループ「乃木坂46」の所属事務所も合同会社のようです。

 

我々現場の専門家がPRをしていくことで認知度やイメージが向上し,これから事業を行う方の選択肢を増やすことにつながれば,専門家冥利に尽きるというものです。

会社設立の際は,お気軽に司法書士までご相談ください!

 

不動産の名義変更~認知症の方がいます~

  2016/11/11    登記, 相続・遺言

不動産の名義変更(相続登記)のご相談の中で,よく質問を受けるものをご紹介します。ご参考になれば幸いです。

 

Q7 相続人の中に,認知症で判断能力が不十分な高齢者がいます。身の回りの世話をしている親族を代理人として,手続きを進めることはできませんか?

 

相続人に,精神障害者や認知症などで自身の財産についての判断能力が不十分とみられる方がいる場合,その判断能力の程度によっては有効に遺産分割協議を行えない場合があります。

事実上,身の回りの世話をしているというだけでは,代理人として遺産分割協議に参加することはできません。

この場合,家庭裁判所に申立てを行い,正式に財産管理を代理できる「成年後見人」を選任してもらう必要があります。

成年後見人を選任せずに遺産分割協議を行い,協議の後で相続人に判断能力がないことが分かった場合,その協議は無効になってしまうため,慎重な判断が必要となります。

不動産の名義変更~未成年者がいるのだが・・・~

  2016/11/11    登記, 相続・遺言

不動産の名義変更(相続登記)のご相談の中で,よく質問を受けるものをご紹介します。ご参考になれば幸いです。

 

Q6 相続人の中に未成年者がいます。手続きの進め方に違いはありますか?

 

未成年者は,原則として単独で財産上の法律行為を行うことはできず,親権者が代理人として手続を行う必要があります。

遺産分割協議も財産上の法律行為にあたるため,相続人の中に未成年者がおり,遺産分割協議が必要となる場合は,親権者が未成年者に代わって協議に参加することになります。

ただし,未成年者の代理人となる親権者もまた相続人となる場合

例えば,未成年者の父が亡くなり,未成年者とその母がいずれも相続人となる場合は,

未成年者と親権者との利害が対立する可能性があるため,親権者が代理人となることはできません。

この場合,家庭裁判所に申立てを行い,「特別代理人」を選任してもらう必要があります。

選任後,特別代理人と親権者(母)との間で遺産分割協議のうえ,相続登記を申請することになります。