スタッフ日記

司法書士のお仕事紹介~商業登記編⑦ 実質的支配者 まさかの続編~

  2021/11/22    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

だいぶ前の記事 になりますが,株式会社の設立の際,司法書士などが公証人に対し,設立会社の実質的支配者が反社会勢力でない旨を申告しなければならなくなったとご紹介しました。

この制度が,去る7月に一部改正されました。

 

改正点は,実質的支配者が反社会勢力ではないという事実を,赤の他人である司法書士でなく,実質的支配者本人から(表明保証という形で)申告できるようになったことです。

どなたが見てもそりゃそうだろうと思っていただける内容かと思いますが,制度改正のきっかけになったとされる実例が,冗談みたいな話だったので晒し上げご紹介します。

 

 

ある司法書士が定款認証の代理申請をした際,届け出た実質的支配者の氏名と生年月日が,公証人が把握する反社会勢力リストの人物と一致してしまうという事案がありました。

こういう引きの弱い人物はどこにもいます。私じゃなくてよかった。

 

その際の公証人と司法書士とのやりとりがこちら↓です。

司「今回設立する会社の,実質的支配者にかかる申告書を提出します。」

公「・・・この人物は反社会勢力の可能性がある。ついては,背中や腕に反社人物と推定される特徴がないか直接確認してきてください。」

司「 」

 

この公証人はいったい何を考えていたんでしょうか。

これがバラエティ番組ならBPO審議入り待ったなしです。

 

私だったら依頼者を公証人のところに連れて行き,公証役場を抗争現場にしてやっていたかもしれません。しかし,この司法書士は冷静でした。

依頼者に直接確認するのは難しいと判断して,警察に相談しました。

 

その際の警察と司法書士とのやりとりがこちら↓です。

司「公証人から,反社かもしれない人物に入れ墨がないか直接チェックしてこいと指示されて困っています。」

警「・・・司法書士に,いったいどんな権限があってそんな調査をしてるのかね。」

司「 」

 

 

このエピソードを聞いた時にまず思ったこと。

公証人も警察も,闘う相手を間違ってやいませんでしょうか。

 

どう考えてもこの騒動最大の被害者は,運悪く板挟みになってしまった司法書士です。

その司法書士が,なぜ関係各位からフルボッコにされているのでしょうか。

 

 

このような経緯で,1名の尊い犠牲のうえに問題点が浮き彫りになり,冒頭の制度改正が実現しました。

改正すべき点はそこだけじゃないような気もしますが,それはそれとして,問題点,特にわれわれ司法書士が割を食うだけの謎手順がすぐに改められたのは,とてもよかったと思います。

この改正がなければ,真冬の北海道でも,依頼者に半袖薄着で事務所にお越しいただくようお願いしなければならないところでした。

 

おそらく依頼者が反社じゃなくても怒られます。

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編⑥ 恐怖の「みなし解散」~

  2021/10/08    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

前回は,商業登記をしないでいると過料の請求を受けるというお話でしたが,今回は,会社によっては過料より痛いかもしれないペナルティのお話です。

 

前回の記事で,株式会社の役員は,メンバーに変更がなくても任期が到来するたびに更新の登記をしなければならないとご紹介しました。

そして,株式会社の役員の任期は,最長でも10年です。

したがって,きちんとルールを守っている会社は,必ず10年に1回以上の頻度で登記をしています。

10年以上登記記録に動きがない会社は,登記をするのを忘れているか,あるいは既に営業実態がなく,放置されている会社のどちらかです。

 

そこで,最後の登記から12年を経過しても登記記録に動きがない株式会社は,法務局から状況確認(警告)の通知が送付されることになっています。

ただ,もしそのような通知が来てしまっても,あわてず法務局に通知の返答をするか,怠っていた登記の申請をすれば,さしあたり大きな問題にはなりません。

 

問題は,そのどちらもしなかった会社です。

通知に対して何もリアクションをしないと,その会社はもはや営業実態がないと法務局に判断され,なんと,法務局に勝手に会社の解散(≒廃業)の登記をされてしまいます。

これを,「みなし解散」といいます。

 

法務局が解散させた会社は,法人の代表者がいなくなります。

(誤解を招く表現でしたが,登記をしなかった罪で社長が法務局の職員に連れ去られるわけではありません。解散により代表取締役の地位を失ってしまうということです。)

そのため,会社名義の契約などができなくなります。

 

また,解散した会社は法律上,廃業に向けた行為しかできないので,営利目的で事業を継続することも許されません。

どれほど順風満帆な会社でも,法務局の手続きを無視したという一事をもって,事業の停滞を余儀なくされてしまうことになります。

たかが登記,されど登記です。

 

なお,一応の救済措置として,みなし解散の登記がされてから3年以内であれば,会社を復活させる登記(会社継続の登記)をすることが可能です。

しかし,たとえ継続の登記をしても,一度されてしまった解散の記録は消えません。

登記記録を見ただけで,法律上やらなければならないことを怠り,お仕置きを受けた会社というのが一目瞭然になってしまいます。

これも地味に痛い。

 

ちなみに,この「みなし解散」の制度,会社の種類が有限会社や合同会社の場合には存在しません。

有限会社や合同会社は役員(社員)の任期に制限がなく,定期的に必ずしなければならない登記というものがありません。そのため,ルールをきちんと守っていても,ずっと登記の機会がないことがあり得るからです。

有限会社を新しく作ることはできませんが,合同会社は設立が可能ですので,ご自身がずぼらとの自覚がある法人設立希望の方は,株式会社でなく,合同会社を選択してもよいかもしれません。

どうしても株式会社でいきたいという方は,もう観念して当事務所にご依頼ください(*^_^*)

 

以上,今回は,情け容赦ない「みなし解散」の制度についてご紹介しました。

 

だんだんと記事のネタがなくなってまいりました。

次回は,引き続き商業登記にまつわる話題を絞り出してご紹介するかもしれませんし,もしかしたら私の家族のよもやま話でお茶を濁すかもしれません。

 

どのような記事になるか,お楽しみにせずにお待ちください。。。

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編⑤ みんな大嫌い「罰金」のお話~

  2021/08/20    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

今回は前回記事に引き続き,商業登記申請にかかるお金のお話です。

しかも今回は,負担しても一文の得にもならない「罰金」についてです。

 

前回記事 は,商業登記は数件に分けて申請するよりまとめて1件で申請したほうがお得になるという話でした。

そうすると,商業登記は放っておけるだけ放っておいて,どうしても必要に迫られた時にまとめてやるのがいちばんお得なんじゃないかと考えてしまう方がいらっしゃるかもしれません。

しかし,そうは問屋が卸しません。

 

商業登記についての最初の記事 で,商業登記制度の目的は会社に対する世間一般の信用の維持にあると書きました。

そうすると,商業登記記録の内容は常に正しくなければならないということになります。

登記の情報がいつ時点のものか分からない古くて不正確なものかもしれないとなると,そんな登記を信用して取引をして大丈夫なのかという話になってしまいます。

そのため,商業登記では法律上,登記事項に変更が生じてから2週間以内に登記をすることが義務づけられており(会社法第915条),それを怠った場合は100万円以下の過料に処せられることになっています(会社法第976条)

 

特にやっかいなのが,平成18年の会社法施行により,任期が2年から最長10年まで伸長された,株式会社の役員の変更登記です。

任期を伸ばせば登記の回数が減ってコスト削減につながるため,少なくとも私が設立登記を担当した株式会社はほとんど,役員の任期を最長の10年に設定しています。しかし,そうすると今度は,利益を上げるために商売に集中しなければならない事業者の方が,10年に一度しか来ない登記のタイミングを忘れず管理できるのかという問題が生じます。

(誤解されがちですが,役員変更は他の登記と違い,メンバーに変更がなくても任期更新の登記をしなければなりません。これも落とし穴の一つです。)

 

現状,登記を怠ったことについて実際に過料のペナルティが発動されるのは,よりによって一番引っかかりやすいこの役員変更の登記だけといわれています。

実際は2週間を過ぎたからといって直ちに過料に処される運用にはなっていないようですが,年単位で放置するとさすがに問題になってきます。

 

過料が来る場合,登記を忘れていた年数×1~3万円くらいの金額になることが多いようです。

したがって,もし5年間登記するのを忘れてしまうと,最悪15万円くらいの過料が来る計算になります。

これはちょっと忘れるわけにはいきません。

 

じゃあ,どうすればよいかという話ですよね。

毎度しつこくて大変恐縮ですが。。。

 

やっぱり,登記は司法書士に任せてください。

 

ということに尽きます。

 

当事務所の場合,ふつうの役員変更登記にかかる司法書士費用(実費を除く)はせいぜい2~3万円です。

この費用で,法務局に対する登記申請はもちろん,別途作成しなければならない株主総会議事録や株主リストなどの作成も行います。ご希望があれば,次回の登記前のタイミングでリマインドを差し上げることも可能です。

2~3万円という金額を軽んじるつもりはありませんが,この金額で10年間,余計な登記や罰金のことを考えず本業に集中できると考えれば,費用対効果は悪くないのではないかと思います。

 

いかがでしょうか。

だんだんと,商業登記は司法書士に任せようという気持ちになってきましたでしょうか。

ぜひそのお気持ちをそのままに,今すぐ定款登記事項証明書を握りしめて当事務所にご相談いただければ幸いです。

 

なお,本記事を見て,「結局ポジショントークかよ,やっぱり司法書士は信用できねぇ。登記なんて自分でできらぁ!過料くらい払ってやらぁ!」とかお考えになったひねくれ者剛胆な会社経営者の方。

私は登記を忘れたことに対するペナルティが,罰金だけで済むなんて一言も言っていません。

 

登記懈怠が度を過ぎてしまうとどうなるか。

次回の記事は,もっと面倒で恐ろしい「みなし解散」についてです。

 

どのような記事か,お楽しみにお待ちくださいΨ(`∀´)Ψヒヒヒ Ψ(`∀´)Ψヒヒヒ

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編④ まとめてお得!商業登記申請(後編)~

  2021/06/11    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

今回は, 前回記事 に引き続き,商業登記で登録免許税を節約する工夫についてご紹介します。

 

ポイントは,商業登記制度にある以下のルールです。

 

【ルール1】

商業登記の場合,あった出来事の種類にかかわらず,いろいろな登記をまとめて1件で申請すること(一括申請)が原則

 

【ルール2】

商業登記の登録免許税は,あった出来事(登記事項)ごとにカテゴリー(課税区分)が決められており,1件の登記申請の中に同一課税区分の登記事項が複数あった場合でも,かかる登録免許税は1回分で済む

 

これを,前回の事例にあてはめてみます。

 

前回の事例は,

(1)令和3年4月10日 取締役Aさんが辞任

(2)令和3年4月16日 株式会社Aには監査役を置かないこととし,同時に監査役Bさんが退任

(3)令和3年4月23日 会社名を「株式会社A」から「株式会社C」に変更

というものでした。

 

この事例の場合,(1)の取締役の辞任と(2)の監査役の退任は,いずれも「役員変更」で同一課税区分です。

同様に,(2)の監査役設置会社の定め変更と(3)の商号変更も,実は「その他の変更」で同一課税区分です。

 

したがって,(1)~(3)の登記申請を順次3件ではなく,まとめて1件で申請すれば(上記【ルール1】),重複する課税区分の登記事項が1回分の計算で済みます(上記【ルール2】)。

結果,かかる登録免許税は,「役員変更」の1万円と「その他の変更」の3万円の,合計4万円で済むようになります。

 

ご理解いただけましたでしょうか。

 

さて,ここからは当ブログお決まりの展開ですが。。。

本記事をご覧になり,情報量の多さと面倒くささに困惑しているあなた(特に会社の総務担当の方),私が何を申し上げたいかというと,

 

悪いようにはしないので,観念して登記は司法書士に任せてください

 

ということです。

 

登記はやることの形が決まっている業務なので,インターネット環境と根性さえあれば,自力で登記申請までたどりつくことはおそらく可能です。

しかし,数年に一度の登記のためにネット検索と書類作成に時間を取られた結果,本業の時間が削られ,あげく申請の補正のために何回も法務局に呼ばれるなんてことになれば,会社にとってはむしろ損失ではないでしょうか。

そこまで頑張って登記完了までたどり着いたとしても,今回の事例のように,本来低く抑えられたはずの登録免許税を気付かずに多く納付してしまったりしたら,もう目も当てられません。

 

司法書士にご依頼をいただければ,登記申請書はもちろん,議事録などの添付書類も司法書士が作成します。当然,費用負担についても(合理的な範囲で)なるべく低く済むようアドバイスをします。

また,万一,申請の補正があったとしても,依頼者にバレないようにこっそり司法書士が法務局に行くので安心です。

 

でも,お高いんでしょう?と思ったあなたも,ご安心ください。

商業登記の場合,ほとんどのケースでは,司法書士の報酬よりも,実費の登録免許税の方がよっぽど高額です。

つまり,自力の登記申請でしくじって税金を余分に納めるくらいなら,最初から司法書士に依頼した方が,時間的にも経済的にも断然お得なのです。

 

ネット全盛のこのご時世,定型業務である登記を生業とする司法書士がしぶとく生き残っている理由について,少しでも思いをはせていただければ幸いです。

 

最後に。

本記事をご覧になっていただき,「まとめて申請した方が得なら,登記は何年かにいっぺんまとめてすればいいや。」と思ったそこのあなた。
次回記事では,そうは問屋が卸さない,恐ろしい「登記懈怠」のペナルティについてご紹介します。

 

どのような記事か,お楽しみにお待ちくださいΨ(`∀´)Ψヒヒヒ

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編③ まとめてお得!商業登記申請(前編)~

  2021/05/07    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

前回記事 では,会社の設立にかかる登録免許税の負担とその軽減方法についてご紹介しました。

しかし,商業登記で登録免許税の負担が大きいのは,会社設立の場面に限った話ではありません。

 

最も登記する機会の多い役員変更こそ1回あたり1万円で済みますが(資本金1億円以下の場合),それ以外の場合,登記する事項ごとに3万円かかるというのが多いパターンです。

(参考:登録免許税の税額表(国税庁HP))

 

たとえば,ある会社に本店の移転と事業目的の変更があった場合,登記をする際の登録免許税は3万円✕2=6万円となります。

これに役員変更が加われば+1万円で,登録免許税だけで7万円かかります。

 

多くて年数回程度とはいえ,特に小規模な会社においては,登記のたびに数万円というのは馬鹿になりません。

このような商業登記の登録免許税の負担を軽減する方法が,今回の記事のテーマです。

 

どういうことか,事例でご説明します。

【事例】

資本金100万円の「株式会社A」という会社で,次の出来事がありました。

(1)令和3年4月10日 取締役Aさんが辞任

(2)令和3年4月16日 株式会社Aには監査役を置かないこととし,同時に監査役Bさんが退任

(3)令和3年4月23日 会社名を「株式会社A」から「株式会社C」に変更

 

上記の(1)~(3)の登記を順次3回で申請した場合,登録免許税の金額は

(1)で1万円(役員変更)

(2)で3万円(監査役設置会社の定め変更)+1万円(役員変更)=4万円

(3)で3万円(商号変更)

合計8万円となります。負担が大きいですね。

 

しかしこの事例,実はある簡単な工夫をすることで,登録免許税が半額の4万円で済むのです。

どういうことかというと。。。

 

長くなったので,続きは次回の記事にします( ´_ゝ`)

お楽しみに!

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編② 会社設立と「特定創業支援等事業」~

  2021/04/13    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

今回の記事は,時節がら事業者の皆様の関心が高いと思われる,税金の負担軽減のお話です。

 

唐突ですが,会社というのはどうやったら誕生するか,ご存じでしょうか。

法律では,人やお金が集まっただけでは,いくら事業の規模が大きくなろうと会社にはなりません。

設立の登記をして,はじめて会社が成立することになっています。

 

その会社の設立登記の際に一番多くかかるお金は,登記の時に法務局に納付する,登録免許税という税金です。

(司法書士にかかる金額は,たとえば株式会社の設立の場合,費用全体の3分の1以下に過ぎません。)

 

登録免許税の額は,設立時の資本金の額に0.7%をかけて計算することになっています。

そのため,一応は,設立の規模が小さい会社ほど,かかる税金も少なくなる仕組みになっています。

しかし,上記の計算結果が,株式会社の場合15万円,合同会社の場合は6万円を下回る場合,登録免許税の金額はそれぞれ15万円,6万円とされます。

つまり最低でも,株式会社を作る場合15万円,合同会社の場合も6万円は税金がかかることになっています。

 

事業をスタートする際には,いろいろなことにお金が必要です。

なけなしの司法書士報酬をゴリゴリ値切られる方がいらっしゃるくらいなので,節約できる費用は可能な限り節約したいというニーズは多いはずです。

 

そこで今回ご紹介するのが,この負担の重い登録免許税を大幅に軽減できる,「特定創業支援等事業」の制度です。

 

この制度を利用すると,端的に,上記の登録免許税を半額にすることができます。

つまり,少なくとも株式会社で7万5000円,合同会社でも3万円,費用を節約することができます。

特に株式会社の7万5000円オフは大きいですね。

浮いたお金で,事業に使うパソコンの1台くらいは買えそうです。

 

どうやって軽減の適用を受けるかというと,所定の創業支援(セミナーの聴講等)を受け,自治体からその証明書をもらったうえで,設立登記の際に証明書を添付する方法によります。

 

自治体の実施する制度ということで,

(1)そもそも制度が実施されているかどうか,自治体ごとにばらつきがあること

(ちなみに,我らが札幌市では実施されています→https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/plaza.html

(2)設立する会社の所在地と同じ自治体で創業支援を受ける必要があること

などの注意点があります。

また,対象となる創業支援は継続的に受講する必要があるものも多く,そうすると必然的に証明書をもらえる(=設立登記ができるようになる)までに時間がかかることになります。

 

会社設立の依頼の際には,とにかく急いで登記をしてほしいと言われることも多く,そのような方にとっては利用しにくい制度かもしれません。

しかし,「創業支援」と銘打つくらいなので,支援の内容はいずれも創業後の事業に有益なものになっているのではないかと思います。

創業のための勉強ができて,かつ費用も安く済むとなると,大いに活用すべき制度ではないかと思います。

時間にゆとりをもって会社設立に取り組むことができる方は,是非,ご一考いただければ幸いです。

 

およそ税金一般に言えることですが,払う場面では黙っていても有無を言わさず持っていかれる一方で,戻ってきたり減免されたりする場面では,こちらが積極的に調べないと何も教えてくれません。

(決して,個人的な恨み言ではありません。)

 

そんなわけで,次回も引き続き,商業登記における登録免許税の節約の方法についてご紹介していきたいと思います。

 

どのような内容か,お楽しみにお待ちください。

 

司法書士のお仕事紹介~商業登記編① 総論~

  2021/02/22    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

今回からは,司法書士の取り扱う仕事のうち,「商業登記」の業務についてご紹介していきます。

 

簡易裁判所での訴訟業務について代理権が与えられて20年近くが経ちますが,依然として「司法書士=登記の専門家」というイメージが非常に強くあるように思います。

 

事実,取り扱う事件全体の件数をみても,司法書士の主戦場が圧倒的に登記業務であることは間違いないのですが,そこで一般の方がイメージされる登記業務とは,主に不動産についてのもの(自宅の新築,住宅ローンの借り換えや完済など)ではないでしょうか。

しかし実は,司法書士が取り扱う登記には,不動産登記だけでなく,商業登記というものもあります。

 

商業登記とは,ざっくりいうと会社や法人に関する登記です。

その会社が何を事業目的とするもので,どこにあり,誰が役員なのかなどは,すべて法務局に届け出て一般に公示する制度となっています。

(一度は名前を聞いたことのある有名な会社についても,法務局に行けば,誰でも登記されている情報を確認することができるようになっています。)

 

地獄の受験生時代のことはあまり思い出したくありませんが,司法書士の資格試験でも,実体法である会社法とあわせると,マークシートの択一問題が16問(70問中)+記述式試験が1問と,会社や商業登記についての問題は試験の多くのウェイトを占めており,それだけ司法書士制度上も,商業登記業務は重視されています。

 

商業登記が不動産登記と大きく違うのは,登記をすることが義務とされていることにあります。

不動産登記制度の目的は,「国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資すること」(不動産登記法第1条)とされています。

私人の権利保護が主な目的なので,登記による保護を受けるかどうかはある程度自由(自己責任)となっています。

 

一方で,商業登記制度の目的は,「商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資すること」(商業登記法第1条)なっており,主な目的は公益的なもの(会社などに対する世間一般の信用)となっています。

そこで,会社に関する登記をすることは当事者の義務とされており,後日別の記事で詳しく触れますが,登記をしないことに対し,過料(罰金みたいなもの)まで準備されています。

 

そんな商業登記制度について,今回から,何回か連載をしていきたいと思います。

 

今回の記事は制度に関する総論的な説明だったため,どうしても無味乾燥な内容になってしまいました。

しかし,次回からは,登記をしないことに対するペナルティ知って得する登録免許税の節約方法など,少しでも実践的で興味をもっていただける内容にしようと考えています。

 

どのような記事か,お楽しみにお待ちください。

 

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編②~

  2019/12/03    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

前回の記事 は,不動産決済の場で平静を装っている司法書士が内心実は神経をすり減らしているというお話でしたが,今回は,そんな不動産決済の場で,実際にあった怖い話です。

 

前回,司法書士は不動産取引において「人」「物」「意思」の確認をしているとご紹介しました。

このうち「人」の確認は,一般的に,当事者ご本人しか持ち得ない身分証の原本の提示を受け,疑わしい点がないか確認する方法で行います。

しかし,不動産は高額なので,時折,売却の権限がないのに売主になりすまし,売買代金を騙し取ってやろうと企む輩が出現します(積水ハウス事件が記憶に新しい,いわゆる「地面師詐欺」)。

 

司法書士も,明らかな書類の偽造を見逃したりすると当然ペナルティーを受けるため,見た目が本物っぽいか以外にも,何カ所か確認のポイントを設けて身分証などをチェックしています。

 

そんな中,ある不動産取引の場で,売主さんからご本人確認資料として運転免許証の提示を受けました。

提示された免許証がゴールドでなく青色だったので,この人はいったいどんな交通違反をしたんだろうと,本人確認とは全然関係のない余計なことを考えていたところ,ふと,免許証の有効期限が交付の5年後であることに気がつきました。

 

運転免許証をお持ちの方はご存じかと思いますが,一般的に,ゴールド免許は更新が5年おきで済みますが,青色の免許証の更新は5年ではなく3年です。

したがって,青色の免許証の有効期限は,ふつうは3年間のはずなのです。

 

冒頭にも書きましたが,不動産決済の場で,司法書士は基本的に平静を装うものです。

例にもれず私も平静を装っていましたが,内心は?の嵐です。

これがもし偽造免許証の詐欺事案だったとしたら,関係当事者が大きな損害を被ってしまいます。

そして,こんなケアレスミスを看過した私にも,責任がないはずがありません(←ここが重要)。

 

結局この時は,その場でインターネットを検索し,警察署のウェブサイトに『過去5年間に軽微な違反(3点以下)1回の方は,青色免許証でも有効期間が5年間になる』と紹介されているのを発見しました。

それとなく売主さんに事情を聞いてみたところ,上記の情報と同旨のお話をされたので,ほっと一安心し,不動産決済はつつがなく終わりました。

(ドタバタしたのは,私の内心だけ)

 

司法書士の仕事は不動産登記の専門知識だけでなく,こんな一般常識も必要なのかと痛感した1日でした。

 

以上,今回は不動産決済で実際にあった怖い話をご紹介しました。

最後までお読みいただいた方の中には,「司法書士はその程度のエピソードで怖いとか騒いでいるのか。」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし,実際,司法書士人生で最もビビった時の話は,とてもじゃないですがこんなブログで笑い話にできるような話ではなかったので,書けなかっただけです。

 

お察しいただければ幸いです。

|ω・`)チラッ

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編①~

  2019/10/25    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

140万円以下の争いごとについて交渉や裁判ができるようになるなど,昔に比べて司法書士が活躍できる場は増えましたが,今も昔も,司法書士のメイン業務といえば不動産登記です。

 

その中でも花形といえるのが,不動産の売買の場に立ち会い,その場で当事者の意向や登記の必要書類を確認して代金決済のゴーサインを出すという,いわゆる「立会業務」です。

 

司法書士は決済の場で,来ているのが本当に当事者本人か(ヒトの確認),売買の対象になっている不動産や当事者の認識に間違いがないか(モノ・意思の確認)をチェックし,かつ,登記申請に必要な書類がすべて揃っているかを確認します。

そして,それらの確認が済んだら,「代金の決済を行ってもOKです」と当事者に宣言します。

そうすると,司法書士が言うなら大丈夫だろうということで,銀行から買主,買主から売主へと,場合によっては億を超えるお金が動きます。

 

したがって,代金決済が済んだ後で,「実は,司法書士の確認不足で登記ができませんでした(๑´ڡ`๑)テヘ」なんてことになると,本当にシャレになりません。

融資した金融機関を出禁になるのはもちろんのこと,場合によっては司法書士のミスで損をした取引当事者から,賠償を迫られる可能性もあります。

 

そのため,決済当日に絶対に間違いが起こらないよう,司法書士は立会の前から,確認に確認を重ねて準備をしています。

 

代金の決済自体は1時間もあれば終わる(しかも大半は待ち時間)あっけない手続であるにも関わらず,司法書士がその場で預かるお金が少ない場合でも十数万円と高額であることから,不動産取引の最後になっていきなり現れ,多額の報酬をひっつかんで高笑いを残して消えていく,みたいなイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが,それは大きな誤解です。

 

その決済に至るまでに,司法書士は一撃必死のリスクに震えながら(言い過ぎました),入念な準備をしています。

そして,司法書士が預かるお金も,多くは法務局に納める税金,つまり実費です。

 

不動産決済に臨む司法書士は,水面を優雅に進んでいるように見えて,水面下で懸命に足ヒレを掻いている白鳥みたいなものなのです。

 

資格自体の認知度が低く,他士業(特に,名前が似ている行政書士の先生)と間違われることの多い司法書士ですが,その仕事の一端をご理解いただけたなら幸いです。

 

次回の記事では,そんな緊張感あふれる立会の場で,本当にあった怖い話をお届けします。

 

乞うご期待!

 

実質的支配者(←ただならぬラスボス感)

  2019/07/31    ブログ, 登記

こんにちは。粒来です。

 

某芸能事務所の闇営業問題のおかげで,「反社会的勢力」という言葉の注目度が一気に上がったように思います。

 

今回はこれにちなんで,司法書士と反社会的勢力との関わりについて,ご紹介させていただきます。

(誤解を招く表現でしたが,そういう意味ではありません。)

 

ちょっと前に,株式会社などの設立時の定款認証手続(会社の基本的なルールを設立前に公証人にチェックしてもらう)に一部変更がありました。

具体的にどういう変更だったかというと,会社の「実質的支配者」が反社会的勢力に属する人物でないかを定款認証時に確認して,該当する法人の定款を認証しないことで,反社会的勢力による法人の設立を妨げるという枠組みが,新たに作られました。

 

要するに,会社設立の手続にフィルターをひとつ設け,ヤク◯(やくまる)さんの悪だくみのための会社を設立しにくくしたということです。

 

規定の内容は,このようになっています。

 

公証人法施行規則

第十三条の四 公証人は,会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には,嘱託人に,次の各号に掲げる事項を申告させるものとする

(以下略)

 

公証人に申告する義務があるのは,定款認証の「嘱託人」です。

そして,司法書士が会社の設立登記を行う場合,多くは,実質的支配者本人ではなく,司法書士が定款認証の嘱託人となります。

つまり,司法書士が公証人に,「今回の設立にかかる会社の実質的支配者は,反社会的勢力ではありません」と宣言する義務を負うことになりました。

 

制度趣旨だけみると素晴らしい制度です。しかし,問題は実効性です。

なじみの方に法人設立を依頼されることもないわけではありませんが,会社設立の依頼者は,どちらかというと初対面の方が多いです。

司法書士は警察や公証人と違い,反社会的勢力に属する人物のリストを持っているわけではありません。目の前の依頼者が反社会的勢力でないことを確認する方法となると,結局のところ,その人の申告頼みになります。

(当たり前ですが,見た目で判断するわけにはいきません。)

 

しかし,司法書士に問われて「私,反社会的勢力です!」と堂々と申告してくれる人は,そもそも隠れ蓑の法人設立など行いません。

詳しく書きませんが,この制度には他にも抜け道があり,残念ながら今回の改正は,司法書士や公証人の責任や手間を重たくしただけの,ザル法の匂いがぷんぷんしています。

 

なお,新しい手続を経て定款認証を受けた後には,公証役場に請求すると,「申告受理及び認証証明書」というものを,無料で発行してもらえるようにもなりました。

これは,当該会社の実質的支配者が反社会的勢力でないことについて,公証人のチェックをクリアしたことの証明書であり,会社設立後に法人名義の預貯金口座を開設する際に,金融機関に提出するなどの活用方法が想定されているようです。

 

 

月末で雑務に忙殺されているところに連日の猛暑が重なり,内容がだいぶ愚痴っぽくなってしまいました。

アメトーーク!でも見て気分転換して,次回はもう少し明るい話題を提供できるよう頑張ります。