スタッフ日記

司法書士のお仕事紹介~商業登記編② 会社設立と「特定創業支援等事業」~

  2021/04/13    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

今回の記事は,時節がら事業者の皆様の関心が高いと思われる,税金の負担軽減のお話です。

 

唐突ですが,会社というのはどうやったら誕生するか,ご存じでしょうか。

法律では,人やお金が集まっただけでは,いくら事業の規模が大きくなろうと会社にはなりません。

設立の登記をして,はじめて会社が成立することになっています。

 

その会社の設立登記の際に一番多くかかるお金は,登記の時に法務局に納付する,登録免許税という税金です。

(司法書士にかかる金額は,たとえば株式会社の設立の場合,費用全体の3分の1以下に過ぎません。)

 

登録免許税の額は,設立時の資本金の額に0.7%をかけて計算することになっています。

そのため,一応は,設立の規模が小さい会社ほど,かかる税金も少なくなる仕組みになっています。

しかし,上記の計算結果が,株式会社の場合15万円,合同会社の場合は6万円を下回る場合,登録免許税の金額はそれぞれ15万円,6万円とされます。

つまり最低でも,株式会社を作る場合15万円,合同会社の場合も6万円は税金がかかることになっています。

 

事業をスタートする際には,いろいろなことにお金が必要です。

なけなしの司法書士報酬をゴリゴリ値切られる方がいらっしゃるくらいなので,節約できる費用は可能な限り節約したいというニーズは多いはずです。

 

そこで今回ご紹介するのが,この負担の重い登録免許税を大幅に軽減できる,「特定創業支援等事業」の制度です。

 

この制度を利用すると,端的に,上記の登録免許税を半額にすることができます。

つまり,少なくとも株式会社で7万5000円,合同会社でも3万円,費用を節約することができます。

特に株式会社の7万5000円オフは大きいですね。

浮いたお金で,事業に使うパソコンの1台くらいは買えそうです。

 

どうやって軽減の適用を受けるかというと,所定の創業支援(セミナーの聴講等)を受け,自治体からその証明書をもらったうえで,設立登記の際に証明書を添付する方法によります。

 

自治体の実施する制度ということで,

(1)そもそも制度が実施されているかどうか,自治体ごとにばらつきがあること

(ちなみに,我らが札幌市では実施されています→https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/plaza.html

(2)設立する会社の所在地と同じ自治体で創業支援を受ける必要があること

などの注意点があります。

また,対象となる創業支援は継続的に受講する必要があるものも多く,そうすると必然的に証明書をもらえる(=設立登記ができるようになる)までに時間がかかることになります。

 

会社設立の依頼の際には,とにかく急いで登記をしてほしいと言われることも多く,そのような方にとっては利用しにくい制度かもしれません。

しかし,「創業支援」と銘打つくらいなので,支援の内容はいずれも創業後の事業に有益なものになっているのではないかと思います。

創業のための勉強ができて,かつ費用も安く済むとなると,大いに活用すべき制度ではないかと思います。

時間にゆとりをもって会社設立に取り組むことができる方は,是非,ご一考いただければ幸いです。

 

およそ税金一般に言えることですが,払う場面では黙っていても有無を言わさず持っていかれる一方で,戻ってきたり減免されたりする場面では,こちらが積極的に調べないと何も教えてくれません。

(決して,個人的な恨み言ではありません。)

 

そんなわけで,次回も引き続き,商業登記における登録免許税の節約の方法についてご紹介していきたいと思います。

 

どのような内容か,お楽しみにお待ちください。

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編②~

  2019/12/03    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

前回の記事 は,不動産決済の場で平静を装っている司法書士が内心実は神経をすり減らしているというお話でしたが,今回は,そんな不動産決済の場で,実際にあった怖い話です。

 

前回,司法書士は不動産取引において「人」「物」「意思」の確認をしているとご紹介しました。

このうち「人」の確認は,一般的に,当事者ご本人しか持ち得ない身分証の原本の提示を受け,疑わしい点がないか確認する方法で行います。

しかし,不動産は高額なので,時折,売却の権限がないのに売主になりすまし,売買代金を騙し取ってやろうと企む輩が出現します(積水ハウス事件が記憶に新しい,いわゆる「地面師詐欺」)。

 

司法書士も,明らかな書類の偽造を見逃したりすると当然ペナルティーを受けるため,見た目が本物っぽいか以外にも,何カ所か確認のポイントを設けて身分証などをチェックしています。

 

そんな中,ある不動産取引の場で,売主さんからご本人確認資料として運転免許証の提示を受けました。

提示された免許証がゴールドでなく青色だったので,この人はいったいどんな交通違反をしたんだろうと,本人確認とは全然関係のない余計なことを考えていたところ,ふと,免許証の有効期限が交付の5年後であることに気がつきました。

 

運転免許証をお持ちの方はご存じかと思いますが,一般的に,ゴールド免許は更新が5年おきで済みますが,青色の免許証の更新は5年ではなく3年です。

したがって,青色の免許証の有効期限は,ふつうは3年間のはずなのです。

 

冒頭にも書きましたが,不動産決済の場で,司法書士は基本的に平静を装うものです。

例にもれず私も平静を装っていましたが,内心は?の嵐です。

これがもし偽造免許証の詐欺事案だったとしたら,関係当事者が大きな損害を被ってしまいます。

そして,こんなケアレスミスを看過した私にも,責任がないはずがありません(←ここが重要)。

 

結局この時は,その場でインターネットを検索し,警察署のウェブサイトに『過去5年間に軽微な違反(3点以下)1回の方は,青色免許証でも有効期間が5年間になる』と紹介されているのを発見しました。

それとなく売主さんに事情を聞いてみたところ,上記の情報と同旨のお話をされたので,ほっと一安心し,不動産決済はつつがなく終わりました。

(ドタバタしたのは,私の内心だけ)

 

司法書士の仕事は不動産登記の専門知識だけでなく,こんな一般常識も必要なのかと痛感した1日でした。

 

以上,今回は不動産決済で実際にあった怖い話をご紹介しました。

最後までお読みいただいた方の中には,「司法書士はその程度のエピソードで怖いとか騒いでいるのか。」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし,実際,司法書士人生で最もビビった時の話は,とてもじゃないですがこんなブログで笑い話にできるような話ではなかったので,書けなかっただけです。

 

お察しいただければ幸いです。

|ω・`)チラッ

 

司法書士のお仕事紹介 ~不動産登記編①~

  2019/10/25    ブログ, 司法書士全般, 登記

こんにちは。粒来です。

 

140万円以下の争いごとについて交渉や裁判ができるようになるなど,昔に比べて司法書士が活躍できる場は増えましたが,今も昔も,司法書士のメイン業務といえば不動産登記です。

 

その中でも花形といえるのが,不動産の売買の場に立ち会い,その場で当事者の意向や登記の必要書類を確認して代金決済のゴーサインを出すという,いわゆる「立会業務」です。

 

司法書士は決済の場で,来ているのが本当に当事者本人か(ヒトの確認),売買の対象になっている不動産や当事者の認識に間違いがないか(モノ・意思の確認)をチェックし,かつ,登記申請に必要な書類がすべて揃っているかを確認します。

そして,それらの確認が済んだら,「代金の決済を行ってもOKです」と当事者に宣言します。

そうすると,司法書士が言うなら大丈夫だろうということで,銀行から買主,買主から売主へと,場合によっては億を超えるお金が動きます。

 

したがって,代金決済が済んだ後で,「実は,司法書士の確認不足で登記ができませんでした(๑´ڡ`๑)テヘ」なんてことになると,本当にシャレになりません。

融資した金融機関を出禁になるのはもちろんのこと,場合によっては司法書士のミスで損をした取引当事者から,賠償を迫られる可能性もあります。

 

そのため,決済当日に絶対に間違いが起こらないよう,司法書士は立会の前から,確認に確認を重ねて準備をしています。

 

代金の決済自体は1時間もあれば終わる(しかも大半は待ち時間)あっけない手続であるにも関わらず,司法書士がその場で預かるお金が少ない場合でも十数万円と高額であることから,不動産取引の最後になっていきなり現れ,多額の報酬をひっつかんで高笑いを残して消えていく,みたいなイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが,それは大きな誤解です。

 

その決済に至るまでに,司法書士は一撃必死のリスクに震えながら(言い過ぎました),入念な準備をしています。

そして,司法書士が預かるお金も,多くは法務局に納める税金,つまり実費です。

 

不動産決済に臨む司法書士は,水面を優雅に進んでいるように見えて,水面下で懸命に足ヒレを掻いている白鳥みたいなものなのです。

 

資格自体の認知度が低く,他士業(特に,名前が似ている行政書士の先生)と間違われることの多い司法書士ですが,その仕事の一端をご理解いただけたなら幸いです。

 

次回の記事では,そんな緊張感あふれる立会の場で,本当にあった怖い話をお届けします。

 

乞うご期待!

 

相続まめ知識① ~相続放棄の思わぬ落とし穴(後編)

こんにちは。粒来です。

 

前回の続きです。

 

「亡くなった夫には自宅不動産とともに借金がある。不動産も借金も妻である自分が引き継ぐことにしたが,万一にも亡夫の借金のことでひとりっ子の息子には迷惑をかけたくない。そこで,遺産分割協議でなく,息子に相続放棄をしてもらうことにした。」

この場合に息子さんが相続放棄をすると,一体どうなるのか。

 

前回のブログで,相続放棄をすると,被相続人との関係で「最初からその人が存在しなかった」ことになると説明しました。
そうすると,今回,ひとりっ子の息子さんが相続放棄をすると,亡くなったご主人には「財産を相続すべきお子さんが,もともといなかった」ことになります。
つまり,今回の相続は「お子さんのいない夫婦」と同じ取り扱いになります。

 

法律上,お子さんがいる夫婦の場合,相続人の範囲は「配偶者と子」です。
では,お子さんがいない夫婦の場合,残った配偶者だけが相続人になるかというと,そうではありません。この場合,「被相続人の直系尊属(親など)」または「被相続人の兄弟姉妹」が,お子さんに代わり,繰り上がって相続人になるのです。

 

今回,被相続人の奥さんは,プラスもマイナスも,被相続人の財産も自分に集約させようと考えていました。しかし,そのために息子さんの相続放棄という選択をしてしまうと,相続財産を集約させるどころか,一般的に息子さんよりも関係の希薄な,ご主人の親御さんやご兄弟を,相続関係に巻き込むことになってしまうのです。

 

これで新たに相続人になった人達がみな元気で協力的であればまだ救いがありますが,折り合いが悪い方や認知症の方がいて,とても相続について話し合える状況ではなかったら,どうなってしまうでしょうか。

最悪の場合,不動産の名義変更はできず,債権者はご主人の親御さんやご兄弟相手に取り立てを始めるという,当初の思惑とは真逆の結果を招いてしまうことになります。

 

 

相続放棄を検討する際は,3か月という短い熟慮期間もあいまって,どうしても亡くなった方の財産や負債の状況ばかりに目が行きがちです。

しかし,財産ばかりに気を取られて相続関係の検討を怠ると,今回のような落とし穴にはまってしまうことがあるので,注意が必要です。

 

 

ということで,今回は相続放棄の注意点についてご紹介しました。いかがでしたでしょうか。

「生兵法はケガの元。やっぱり相続は司法書士に依頼しよう!」と思っていただけたのであれば,もうけもの幸いです。

 

早くも連載ものにすると宣言したことを後悔し始めていますが,次回以降もネタの続く限り,皆様のためになる相続まめ知識を提供していきたいと思います。

ぜひ,お楽しみにお待ちください!

 

玄人好みの「合同会社」

  2018/01/10    ブログ, 司法書士全般, 登記

あけましておめでとうございます。粒来です。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

最近,といっても昨年の話ですが,ご依頼をいただいて「合同会社」の設立登記を行いました。

会社=株式会社というイメージが強いので耳慣れない方もいらっしゃるかと思いますが,日本で「会社」と呼ばれるものは4つの形があり,合同会社もそのうちのひとつです。

平成18年の法律改正で新しくできた形なのですが,特に起業して間もない小規模な事業や,顧客や取引先との信頼関係が十分にある方が会社を設立する場合,株式会社よりもメリットが多いケースも多く,弊所でもご依頼が増えています。

 

株式会社と合同会社には,おもに次の違いがあります。

 

1.会社に対する発言力

株式会社は,「お金を出したら口も出す」を地で行く組織形態です。出資者(お金を出した人)は会社の株主として,出資金額に応じた発言力をもちます。

これに対して合同会社では,出資者(社員)の発言力は,会社独自のルールで自由に決めることができます。単純に社員の頭割りによる多数決にすることもできますし,出資の金額が少なくても実力のある特定の社員の発言力だけを高めることもできます。

 

2.業務執行(会社の運営)を誰がするか

株式会社は,多数の出資者から広くお金を集めて事業を行う前提で組織設計されているので,出資者(株主)自身ではなく,株主が多数決で選んだ取締役が会社を運営します。

一方,合同会社は,仲間内でお金を出し合って事業を行うという前提で組織設計されているため,原則として出資者(社員)がそのまま会社を運営します。

 

3.登記費用

これが地味に大きいところなのですが,会社設立にかかる登記費用は,株式会社の場合,実費だけで最低20万円はかかります。一方,合同会社では,必ずかかる実費は6万円程度です。

また,会社設立後も,株式会社では最長でも10年に1度,役員の変更登記を行う義務があり(メンバーに変更がなくても登記する必要がある),これを怠ると裁判所から罰金(過料)を課せられます。しかし,合同会社では社員に任期がないため,定期的な役員変更登記は不要です。

 

合同会社の弱点としては,一般の認知度やイメージで株式会社に劣ることが挙げられます。しかし,身近な例でいうと,スーパーマーケットの西友,インターネット通販のAmazonの日本法人や,弊所の司法書士 及川が愛してやまないアップル社(iPhoneの会社)の日本法人も合同会社です。あとは調べてびっくりしましたが,アイドルグループ「乃木坂46」の所属事務所も合同会社のようです。

 

我々現場の専門家がPRをしていくことで認知度やイメージが向上し,これから事業を行う方の選択肢を増やすことにつながれば,専門家冥利に尽きるというものです。

会社設立の際は,お気軽に司法書士までご相談ください!

 

ADRってご存知ですか?

  2017/04/20    ブログ, 司法書士全般, 研修会

こんにちは。粒来です。

 

今週の土曜日,札幌司法書士会のADRセンターの研修に参加してこようと思っています。

 

ADRというのは「裁判外紛争解決手続」の略で,法務省のHPでは

「民事上の紛争を,当事者と利害関係のない公正中立な第三者が,当事者双方の言い分をじっくり聴きながら,専門家としての知見を生かして,柔軟な和解解決を図るもの」と説明されています。

 

司法書士には,争いの目的となっているものの価格が140万円以下の民事上の紛争について,法律相談に応じたり当事者を代理したりする権限がありますが,そのような問題には,必ずしもゴリゴリの強硬手段(裁判手続)で解決を図るのがベストとはいえないものもあります。

 

裁判所は請求する権利の有無について判断してもらう場なので,必然的に,重要視されるのは請求を基礎づける事実(要件事実)があるかないかという点になります。当事者の感情的な対立や紛争の背景というのは,裁判においては余分な情報にすぎず,あまり大きく取り扱ってはもらえません。

 

しかし,裁判所に認めてもらった権利を実現できるかどうかは,権利を認めてもらうこととは別問題です。裁判で勝訴判決を得ても,その結果に相手が納得せず義務の履行を拒まれてしまうと,結局,当事者の希望が実現できずに手続きが終わってしまうこともあります。

これでは,紛争が「処理」されただけで,最終的な「解決」には至ったとはいえません。

 

そのため,当事者(特に請求の相手方)にいかに納得してもらうか,というのも,最終的な紛争の「解決」には大事なことになります。そのために裁判上はあまり重視されない,当事者の感情面にもスポットをあてて問題解決を図りましょう,というのがADR手続の理念です。たぶん。

 

たぶんと書いたのは,今回私が研修に参加する動機が,会のADRセンターの登録の更新期限が迫っており,登録更新のための単位が足りていないことだからです。

最後に研修を受けたのもだいぶ昔の話で,正直,機関設計や手続きの流れの細かいところは忘れてしまいました。

 

上記のとおり(おそらく)高尚な理念のもとに運営されているADR手続なので,いい加減なのは私だけ,みたいな状況で恥をかくことのないよう,せめて真面目に受講してこようと思っています。

 

依頼者との信頼関係

  2017/01/04    司法書士全般

こんにちは。椎名です。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

司法書士という仕事をして行く上で,一番大切なのは依頼者との信頼関係であると考えています。

 

そのために,私が心がけているのは,まず依頼者本人の話を良く聞くと言うことです。

相談を受けるときには,8割は依頼者の話を聞き,私が話すのは2割くらいという感じです。なにしろ,事実を一番よくわかっているのは依頼者本人なのだから,こちらがあまり話し過ぎては,聞ける話も聞けなくなってしまいます。

また,話の内容は正確に聞かなければなりません。

不明確な部分があれば,勝手にこうだろうと解釈したりせずに確認しなければなりません。

 

話を良く聞き事実を把握してから,依頼者の立場に立って考えます。

もし自分がその人の立場ならどう考えるだろうか,どう感じるだろうか,と出来るだけ想像力を働かせます。

 

相手の話を良く聞くことと,相手の立場に立って考えることが信頼関係を構築して行くための最初の一歩かと思います。

これは,何も司法書士業務に限ったことではないかもしれません。

 

その上で,業務を迅速に処理したり,進捗報告をしたり,約束を必ず守ることなどは,勿論大切です。

 

 

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正月は,網走に行ってきました。宿泊先のホテルでの餅つきです。