スタッフ日記

2015年3月5日 旧ブログ掲載記事


労働事件について ~未払残業代等の請求③~


こんばんは、髙井です。

 

会社に対して、未払残業代等の請求を行うと、直行直帰の営業職の方などでは、会社側からのよくある反論として、

 

「当社は、事業場外のみなし労働時間制を採用しているので、未払の賃金は存在しません。」と主張されるケースがあります。

 

まず、事業場外のみなし労働時間制とは、どのような制度なのかというと、直行直帰の営業職などで労働時間の算定が困難な場合は、所定労働時間労働したものとみなす規定があります。これを事業場外のみなし労働時間制と言います。

 

確かに、営業職など事業場外で働いていれば、会社としては、労働者の労働時間を把握することが困難ではあると思います。しかし、事業場外で働いている全ての労働者について、事業場外のみなし労働時間制の適用が受けられるわけではなく、この規定の適用が受けられるのは労働時間の算定が困難な場合に限って認められています。
これは、本来、使用者には労働時間の把握算定義務があるからです。

 

通達では、事業場外で業務に従事する場合であっても、①グループリーダーがいて労働時間の把握ができたり、②携帯電話などによって常時使用者の指揮命令を受けて業務を行っていたりなど、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、みなし労働時間の対象とはならないとされています。

 

したがって、会社から事業場外のみなし労働時間制を定めているとの主張があったとしても、労働者の業務について使用者の指揮監督が及んでいることを証明できれば、残業代等の請求を行っていくことは十分に可能です。

 

私が相談を受けた営業職の方は、1時間の定額残業代の支払いを受けるだけで、営業ノルマ達成のために、夜遅くまで働き通しでした。私が内容証明郵便を送り、会社に対して未払の残業代等を請求すると、予想通り、会社からは事業場外のみなし労働時間制を採用しているので、未払賃料は不存在であるとの主張が出てきました。
そこで、本件についても、労働審判の申立を行い、労働者の勤務状況を説明し、使用者の指揮監督が及んでいた事情を具体的に説明していきました。
その結果、第2回目の期日で、調停が成立し、請求額の全額ではありませんが、未払の残業代等を回収することができました。

 

みなし労働時間制の適用があると会社から主張される場合、この規定を受けないことを主張立証するだけでなく、事業場外で働いているため、実労働時間の主張立証も苦労することが多いです。
しかし、私は、労働者が一定の資料を持っていれば、未払の残業代等を請求できるケースも多数あると考えております。

 

 

2015年3月1日 旧ブログ掲載記事


労働事件について ~未払残業代の請求②~


こんにちは、髙井です。

 

会社に対して、未払残業代等の請求を行うと、会社側からのよくある反論として、

 

「『〇〇手当』は、定額払いの残業代であり、すでに残業代は支払済みだから、未払賃金は存在しない。」と主張されるケースがあります。

 

この点について、会社が主張する「〇〇手当」が残業代の支払いとして認められるためには、雇用契約書や就業規則などで、その手当は残業代として支給している旨を明確に規定する必要があります。
したがって、会社側から、上記のような定額残業代として支払済みであるとの主張がされた場合は、就業規則などの定めをもとに、その手当の性質を検討して、割増賃金の請求を行うことになります。
一部の会社では、手当は支給しているけど、就業規則等で明確に定められていないこともあり、この場合は、「〇〇手当」が支払われていても、残業代等を請求する余地は十分にあります。

 

手当が支給されている場合、相談者が雇用契約書や就業規則等を持っていると、相談段階で、より正確な未払の残業代等を計算することができます。しかし、退職後に相談を受ける場合は、相談者が契約書や就業規則を持っていないことも多いので、その場合は、会社に対して、就業規則を開示するように請求することになります。
常時10人以上の労働者を使用する会社は、労働基準法上、就業規則を必ず作成しなければならないことになっています。したがって、10人以上の労働者が在籍する会社については、就業規則が作成されていることが大半ですから、この場合、会社に対して、就業規則の開示請求を行えば、就業規則の確認をすることができます。

 

なお、「〇〇手当」が、定額残業代の性質を有するとなった場合でも、定額残業代が実際の割増賃金よりも不足するのであれば、もちろん、その差額分を請求することができます。

 

 

2015年2月26日 旧ブログ掲載記事


労働事件について ~未払残業代等の請求①~


こんばんは、髙井です。

 

労働事件の相談の中で、不当解雇と同じくらい相談が多いのが、未払残業代等の請求に関する相談です。
未払残業代等の請求の相談を受けていて、1番頭を悩ますのが、労働時間の立証方法です。

 

会社は、原則として、労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならず、かつ、1日について8時間を超えて労働させてはなりません。これを超えて労働をした場合、超過労働時間について、一定の割増賃金(25%~60%以上)を支払わなければなりません。
「仕事が遅いから」「仕事ができないから」という理由で、残業代の請求を拒むことは当然できません。一度決められた給料と条件であれば、時間外に仕事をすれば割増賃金の支払義務が当然に生じます。

 

問題は、この超過労働時間をどのように立証するか、ということです。
会社が、タイムカードを利用していれば、実労働時間とタイムカードの打刻時間は、ほとんど一致するので、タイムカードがある場合は、それを前提として労働時間を計算していきます。しかし、タイムカードがない場合や、タイムカードの記載が実労働時間と異なる場合は、立証方法を工夫して、残業代を請求していくことになります。

 

残業代等の請求の相談を受けた場合は、まずは、タイムカードの有無を確認します。タイムカードの打刻時間は、客観性の高い資料のため、証拠価値もあり、タイムカードがあれば、未払残業代等の請求が認められる可能性は高くなります。

 

しかし、タイムカードがあっても、打刻時間が不正確であるため、タイムカードだけでは実労働時間を把握できないということもあります。よく見るのが、出社時間はタイムカードで把握できるけど、退社時間が打刻されていないというケースです。また、日付をまたいで仕事をするので、退社の際に打刻すると、翌日の出社時刻に打刻がされてしまうため、退社時刻は全て手書きで記載されているケースというのも見たことがあります。
この場合でも、使用者は労働時間を把握算定する義務を負っているので、労働者の手持ちの資料や、その職種の特徴から、可能な限り実労働時間を再現して、未払いの残業代等の請求を行えば、認められる可能性は十分にあります。

 

また、タイムカードがない場合であっても、仕事の関係から、日報や日誌を付けている場合があります。トラックの運転手などは「運転日報」等毎回の乗務ごとに付けることになっており、会社も一定の期間、運転日報を保管する義務を負っています。運転日報には、乗務開始時刻、乗務終了時刻、走行距離、経由地、休憩時間など、労働時間を導き出す情報が記載されているので、日報・日誌に記載された時間は有力な資料となります。もちろん、タイムカードより客観性が高くないので、実際の勤務状況等から、日報・日誌の記載が誤りとされる可能性はあります。しかし、これ以外に勤務時間に関する資料がない場合は、有力な資料となります。また、明確にこれに反する資料がない場合は、日報・日誌に記載された数字が認められる可能性は高くなります。

 

会社が労働時間の具体的な管理をしておらず、資料が存在しない場合でも、「労働者が自分の勤務時間をメモしていた」とか、「退社する際にメールを送って送信日時を記録していた」というような場合は、実労働時間を把握する資料となります。しかし、これらの資料は、私的につけたものなので、客観性が高い資料とはいえません。この場合は、様々な資料をもとにして、工夫して労働時間を再現していきます。
ただし、労働時間を正確に立証することができない場合も、「1週間に1日しか休みがなかった。」という方であれば、1日に最低でも8時間の労働をしていたことを立証できれば、週40時間を超えた分の割増賃金を請求することができます。また、職種によっては、深夜に働くことが当然なのに割増賃金が支払われていない場合もあります。この場合は、新聞配達員であることや、深夜営業する飲食店で働いていたことを主張するだけで、深夜労働時間の割増賃金の請求が認められる可能性は高くなります。

 

相談を受けていると、実労働時間を立証することが困難なケースがとても多いです。
この場合は、相談者から、仕事の内容を詳細に聞き取ります。相談者がもっている資料が労働時間を立証するのに使えないか検討してみたり、その会社のホームページや、求人情報を調べてみたり等、工夫をして、実労働時間の把握につとめています。

 

 

 

 

2015年2月6日 旧ブログ掲載記事


労働事件について ~不当解雇~


こんばんは、髙井です。

解雇に関する相談は、労働問題の相談を受けていて、非常に多いです。
今回は、解雇の相談を受けた際に、どのようにして、依頼者と問題解決を行っているのかを書きたいと思います。

 

まず、相談者から話を聞くときは、どのような理由で解雇されたのか、
そして、その解雇が、はたして、有効なのか、無効なのか、という点を意識して聞き取りをするようにしています。

 

そもそも、解雇について、法律ではどのように規定がされているかというと、
民法では、雇用に期間の定めがなければ各当事者は、いつでも解約の申込にをすることができ、この場合においては雇用は解約の申込み後2週間の経過によって終了する、と規定されています(627条1項)。
つまり、各当事者は、いつでも契約関係を終了されることができ、「解約の自由」が認められています。
しかし、使用者による「解約の自由」(解雇)を認めてしまうと、労働者の生活に大きな打撃を与えることになるので、労働法によって一定の制限が加えられています。
使用者による解雇は、労働契約法により制限が加えられており、同法では、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています(16条)。

 

したがって、解雇事件の多くは、使用者が主張する解雇理由に「合理性」と「相当性」が認められるか否かについて争うことになります。

 

労働者から依頼を受け、その解雇は無効であると争う場合、まずは、使用者に対し、解雇理由を記載した証明書を請求し、解雇理由を特定させることが必要となります。
そこで、使用者に解雇理由を特定させるために、
「退職時等証明書(労基法22条1項)又は「解雇理由証明書(同法2項)」
の交付を請求します。
労働者が使用者に対して、上記証明書の交付を請求した場合、使用者は遅滞なく、証明書を交付しなければなりません。また、この証明書に記載すべき解雇理由については、通達で「具体的に示す必要があり、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記載しなければならない。」とされています。

 

この解雇理由を特定させる意味は、
使用者が解雇の有効性を争う、あっせん、労働審判、民事訴訟などにおいて、証明書に記載した解雇理由とは別個の理由を、当該解雇について主張することを困難にするという効果があります。
つまり、使用者側が解雇理由を後出しで追加することを制限できるということです。
なお、証明書に記載された以外の解雇理由を後から主張することについては、肯定説と否定説がありますが、肯定説をとったとしても、証明書に記載のなり事実は、解雇当時、使用者がその事実を重視していなかったと評価されたり、解雇回避の措置や解雇に至る経過の点から当該事実が低く評価されたりすると考えられます。
したがって、解雇理由を記載した上記の証明書を、早い段階で使用者側に請求することは、大きな効果があるのです。

 

使用者から交付を受けた「退職時等証明書」又は「解雇理由証明書」を、依頼者と一緒になって検討します。その結果、使用者が主張する解雇理由に「合理性」と「相当性」が認められないと判断した場合には、解雇は無効であるから、「労働者は雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める。」という、地位確認請求の労働審判の申立をして、事件の解決にあたっています。

 

依頼者が、「こんな会社に戻りたくない。」と復職を求めずに、金銭的解決のみを希望する場合も、上記の地位確認請求の労働審判の申立を行います。
なぜなら、解雇が権利濫用として無効であると判断されれば、労働者は解雇日以降の賃金請求権が認められるからです。
この点について、無効な解雇を不法行為(民法709条)として損害賠償を請求し、慰謝料や遺失利益(解雇により退職させられなければ得られたであろう賃金相当額)等を請求する方が、ストレートに労働者の希望を実現できるようにも思えます。しかし、権利濫用にあたる解雇が当然に不法行為となるとは言えないため、地位確認請求の構成をとり、労働審判の申立をしております。
不法行為構成をとると、使用者の故意・過失、損害の発生、因果関係などの不法行為の成立要件を満たさなければならず、地位確認構成をとる方が、その後の争いやすさの点で都合がよいと考えられるからです。

 

労働審判の申立書には、「予想される浄点及び当該浄点に関する重要な事実」の記載が規則上求められています。そこには。相手方会社の主張する解雇理由はどのようなもので、その解雇理由には、「合理性」と「相当性」が認められないということを、具体的に記載していきます。
上記のとおり、「解雇理由証明書」には、解雇に至った理由やその事実関係まで詳細に記載されているので、会社が主張する解雇理由とその事実関係について、依頼者と一緒になって、様々な視点で検討し、労働審判の申立書を作成していきます。
打ち合わせを行う中で、私が、使用者側(相手方)の立場に立って、使用者側に有利になるように事実関係を解釈し、依頼者に質問を続けると、「髙井さんは、どっちの見方なんだ。」と怒り出す依頼者もいました。しかし、私は、依頼者との綿密な打ち合わせこそが、労働審判にとっては、最も重要だと考えています。依頼者も、私からの質問に答え、自分の意見を繰り返し述べることで、今回の事件の問題点や自分自身の主張も整理ができてきて、労働審判手続きでは、自分の意見をきちんと主張できるようになるのではないかと考えています。

 

不当解雇の事件は、残業代等の請求よりも依頼者から聞き取ることが多く、一緒に検討することも多いです。しかし、そこの手を抜いたら、問題解決は遠ざかるだけだと思い、依頼者に真剣に向き合って、問題解決にあたっています。

 

 

労働審判制度をご紹介します

  2016/11/10    労働問題

こんばんは,高井です。

先日,札幌司法書士会の研修会で,平成18年から平成27年までの裁判件数の推移について,お話を聴く機会がありました。

地方裁判所においても,簡易裁判所においても,通常訴訟の件数は減少傾向にあるのに対し,労働審判の申立件数は,増加傾向にあるということでした。

平成18年(労働審判がスタートした年)は,労働審判の件数は,877件でしたが,その後,平成20年には2052件,平成23年には3589件,平成27年には3679件と,年々増加をしております。

訴訟件数自体は減る中,労働審判の件数は増加しており,今,労働問題が年々増加していることが裁判件数の推移から見ても分かります。

 

この労働審判というのは,どのような手続かといいますと,労働問題を解決するための設けられた調停手続です。

手続にも特徴があり,3回以内の期日で審理が終結するため,スピーディーに問題解決を図ることができます。

手続を実施するのも,裁判官だけでなく,労働問題に詳しい民間の方が2名加わり,合計3人で手続を進めていきます。そのため,裁判のように,かたちにとらわれずに柔軟に手続きが進行していきます。

さらに,民事調停と異なり,話がまとまらない場合は,審判というかたちで裁判所の判断が示されます。そのため,紛争解決の実効性があると言われています(民事調停では,話がまとまらないと調停不成立となり,何の判断も示されません)。

 

司法書士は,この労働審判手続において,労働審判申立書を作成するというかたちで支援しております。当事務所では,単に申立書を作成するだけでなく,審判期日にも同行して,一緒になって問題解決を図っております。

依頼者の中には,裁判所に行くのも初めてという方もいらっしゃいますが,皆さん,真正面から問題に向き合って,ご自身の力で適切に問題解決をされています。

この労働審判という手続は,上記のとおり,民間の方2名が手続に参加されるため,通常の裁判と違ったかたちで,かたちにとらわれずに柔軟に手続が進んでいきます。

また,ほとんどのケースでは,給料を払わない会社,不当解雇をした会社の側に問題があることが多く,労働者のペースで期日が進んでいくので,依頼者本人が手続きに関与していくにも,大きな負担はありません。

労働審判を利用した依頼者のお話を聞くと,裁判所が自分の話をきちんと聞いてくれたということで,手続自体の満足度も高いように感じております。

 

 

2015年2月4日 旧ブログ掲載記事


労働事件の関わりかた


こんばんは、髙井です。

 

先週に引き続き、労働事件のことを書きたいと思います。

 

労働問題の相談で多いのは、残業代の割増賃金の請求に関する相談と、不当解雇に関する相談です。

 

これらの相談を受けた場合、司法書士は、相手方に請求する金額が140万円以下であれば、代理人として相手方と交渉することができます。話し合いがまとまらなければ、訴訟代理人として、簡易裁判所の法廷に立つこともできます。

 

しかし、私が、労働事件を受任し、解決に至った事件の半数以上は、上記の訴訟代理人としてではなく、労働審判制度を利用して、労働審判申立書の書類作成支援を行うかたちで、問題を解決してきました。

 

このこともあって、私は、労働審判制度は、労働事件を解決するうえで欠かすことのできない制度であると考えています。

 

労働審判制度の特徴は、

 

迅速・適正・柔軟な紛争解決を図ることができ、かつ、紛争解決の実効性があると言われています。

 

原則として、3回以内の期日で審理を終結しなければならないと定められているため、通常訴訟と比較し、スピーディに紛争解決を図ることができます。
また、裁判官1名と労働関係の専門的な知識経験を有する2名(労使それぞれから1名ずつ)によって構成される労働審判委員会が紛争処理を行うため、適正な紛争解決を図ることができるともいわれています。
さらに、調停の成立による解決を試みるため、柔軟な紛争解決を図ることができます。
そして、民事調停とは異なり、調停がまとまらないときでも、審判というかたちで、裁判所の判断が示されるため、紛争解決の実効性があるともいわれています。

 

次に、労働審判の対象となるのは、「個別労働関係民事紛争」に限定されています。

 

この「個別労働関係民事紛争」とは、

 

解雇、雇い止め、賃金・退職金未払い、人事異動(配転・出向・転籍)、労働条件引き下げ、労働者の人格権侵害(セクハラ・パワハラ)、労働災害など、およそ、労働者と使用者との間の権利紛争であれば、労働審判の対象となります。

 

ただし、労働者間の紛争や公務員の任用関係に関する紛争などは、労働者と使用者との間の紛争ではないので、労働審判の対象とはなりません。

 

さらに、管轄裁判所にも特徴があり、労働審判を管轄するのは、訴額にかかわらず、全て地方裁判所とされています。しかも、一部の支部を除いて地方裁判所の支部では労働審判は実施されていなく、労働審判の申立は、地方裁判所の本庁に対して行う必要があります。

 

札幌地裁の管内の裁判所であれば、例えば、小樽支部や苫小牧支部などでは労働審判は実施されていなく、すべて札幌地裁の本庁で実施されることになります。

 

そして、司法書士が労働審判に関わる場合は、全て地方裁判所で取り扱われることになるため、代理人として関わることができません。そこで、労働審判申立書を作成するというかたちで、依頼者の支援をしています(司法書士法第3条1項4号「裁判所提出書類の作成業務」)。

 

労働審判手続きは、期日が3回まで決められているので、1回目の期日から充実した審理が行われます。
第1回の期日調整の際も、裁判所から第1回期日は2時間程度時間をとると言われます。
私の経験では、第1回期日最初の1時間~1時間30分ほどで、申立人と相手方が同席のもとで浄点等の整理を行い、その後は、解決金の話にもなるので、申立人、相手方、それぞれ別席で期日が進んでいきます。

 

私は、労働審判申立書を作成する際には、依頼者から事件に関することを様々な視点で聞き取りを行うようにしています。単に申立書を作成するのみではなく、上記の労働審判手続で浄点になるであろう点を依頼者と確認し、裁判官や労働審判委員から質問されても、問題なく答えられるよう、依頼者と綿密に打ち合わせを行うようにしています。

 

また、第1回期日の直前に、相手方の会社から答弁書が提出され、申立人の主張に対する反論書が、裁判所と申立人に提出されます。
この答弁書に対しても、第1回期日の直前に依頼者に事務所まで来てもらい、綿密な打ち合わせをして、必要であれば、答弁書に対する反論書も第1回期日までに提出するようにしています。

 

私は、労働問題を解決しようと司法書士のところに相談に来てくれる方は、単に法律や解決手段を知らないだけで、この点をサポートしてあげられれば、その人自身の力で、十分に問題解決をできる能力を持った人たちだと思っています。むしろ、私なんかが代理人として話すよりも、依頼人本人が相手方や裁判所に話す方が、はるかに説得力があり、迫力もあるんじゃないかと感じるときもあります。
この説得力や迫力は、第1回期日までに依頼者と何度も打ち合わせを行い、法的問題点を確認していく中で、どんどん増していくと感じるときがあるので、労働審判の打ち合わせは、単に申立書を作成するものという位置づけではなく、非常に重要なものだと思い、取り組んでいます。

 

依頼者と面談を重ねた結果、労働審判の手続きの中で、依頼者が自分の言いたいことをきちんと主張でき、問題の解決に至ったときは、今までの悔しい思いなども清算でき、納得したかたちで、新しい職場で再出発ができるんじゃないかと、労働事件を解決した依頼者を見ていて、感じるときがあります。

 

私と依頼者との相性もあるので、ここまで書いたように全てがうまくはいかないのですが、このようなかたちで、労働事件を解決できたときには、仕事をやって本当にやりがいを感じます。
もちろん、代理人として相手方と交渉し、その結果、問題解決に至ったときも、大きな喜びを感じるのですが、労働審判などの書類作成支援というかたちで、依頼者が主役となり、依頼者を補助的にサポートして、問題を解決できたときも、代理人とは違った意味で、大きなやりがいと感じます。

 

したがって、労働審判申立書の作成支援というのは、私にとって、大事な仕事であり、今後も力を入れて取り組んでいきたい分野でもあります。

 

 

2015年1月30日 旧ブログ掲載記事


労働事件に取り組むきっかけ


こんばんは、髙井です。

私が労働事件に取り組むきっかけについて書きたいと思います。

 

私が司法書士の登録をしたのは、平成21年4月です。

同年9月には簡裁代理権を取得し、債務整理を中心業務として行っていました。

当時は、改正出資法が施工される前でしたので、

多重債務に苦しむ方がたくさんいて、

毎日のように債務整理の相談を受けていました。

 

そんな中、生活再建に向けて、本人・家族と協力し、破産手続きを行い、

面積許可の決定をもらったのに、

その後、会社を解雇された方がいらっしゃいました。

また、生活に困窮し、やむなくヤミ金から借り入れてしまい、

ヤミ金から会社に取立の電話がかかってきたことが原因で

解雇された方もいらっしゃいました。

その他、退職を強く迫られて今後の生活に悩みを抱えている方、

会社の一方的な理由で給料が支払われなくなった方、

週20時間以上も残業しているのに一切の割増賃金が支払われていない方など、

債務整理事件に取り組む中で、

労働問題に悩む依頼者がたくさんいらっしゃいました。

 

借金をするきっかけが、会社の倒産、あるいは会社から解雇された、

給料が支払われなくなったという方は、相談者の中にいて、

債務整理事件を処理するうえで、債務の整理だけではなく、

労働問題も含めて解決を図らなければ、

依頼者の本当の意味での解決にならないと思うようになりました。

また、労働問題を抱えている方は、会社から一方的に解雇されたり、

働いた分の給料が正当な理由もなく支払われなかったりなど、

一生懸命働いたのに自分自身の労働の成果が認められず、

相談を受けていて、その悔しい思いが私にも伝わってきました。

そこで、債務を整理して再出発を図っていくためにも、

借金のきっかけになった不当解雇など、

本人自身でも気持ちの整理ができていない部分について、

少しでも手助けができたら、今後の生活再建に役立つのではと思い、

労働事件にも積極的に取り組むようになりました。

 

今後も、相談者の問題解決のために、労働法の勉強をし、

働問題に積極的に取り組んでいきたいと思います。