スタッフ日記

司法書士のお仕事紹介~債務整理編⑤ 個人再生(その3)~

  2020/08/27    ブログ, 債務整理

こんにちは。粒来です。

 

本当は今回から自己破産の手続きのご紹介をしようと考えていましたが,人気ドラマの話題に乗っかってみます。

 

TVドラマの「半沢直樹」が大人気ですね。

物語の後半では,銀行に属する主人公が,経営再建をもくろむ航空会社を巡って,政府とバチバチやりあう様が描かれるようです。

 

そこで描かれているのは,(当事務所が日ごろ取り扱っている個人消費者の事案とは,スケールの大きさや複雑さにおいて天地ほどの差がありますが)いってみれば「企業の債務整理」です。

 

そのドラマの中で,政府側の急先鋒,筒井道隆さん演じる乃原弁護士が,非常に憎たらしいと評判のようです。

劇中,債権者に悪態をついたり机を蹴っ飛ばしたりするなど,非常に横柄な人物として描かれている同氏のセリフに,次のようなものがありました。

 

「銀行には一律7割の債権カットをお願いすることにしました。」

「返答のタイミングは、こちらから連絡します。」

 

なんと,債務者である企業から,本来お金を返さなければならない債権者に対し,一方的に債権の減額を要求し,あまつさえ自由な反論も許さないという姿勢。なんという傍若無人ぶり。

ドラマはもちろん,主人公の属する銀行(債権者)視点で進んでいくので,この弁護士の主張はいかにも不条理に映ります。

 

しかし実は,前回までの記事でご紹介した個人再生の手続きにおいては,上記と似たような債務者本位の取り扱いが,ごくごく普通になされています。

 

再生手続において,債権者は原則として一律平等に債権カットを命じられます(民事再生法231条)。そして,債権者が意見を述べる機会は,債権の金額を届け出る場面(同法94条,225条)と,債権カット等についての最終決議の場面(同法230条)の通常2回くらいしかありません。

(当事務所で依頼者の方がよく利用される,小規模個人再生の場合)

 

ドラマではこれから,安易に負債のカットを推し進めようとする乃原弁護士と,よりよい再建案を模索する半沢次長の対決が見られるのでしょう。

私は日ごろ債務者側でしか仕事をすることがないので,反対の債権者側からの視点や,上記の乃原弁護士の執務姿勢には,少し考えさせられるところがありました。

(当たり前ですが,私は机を蹴ったりしません。悪態はたまにつきますが。)

 

借金の負担を減らすのはあくまで手段であり,大事なのは,依頼者に今後,借金に頼らない安定した生活を営んでいってもらうことです。

 

そのためには,これから半沢次長が大ナタを振るうであろう,企業体質の改善(個人の債務整理でいえば,家計収支をはじめとした生活状況の改善といったところでしょうか。)を行うことも,債務の減額と同じくらい重要です。

 

債権者側から債務整理を描いたこのドラマは,私の隣で,思うさま劇中の弁護士への悪口を言っていた妻とは,たぶん違った意味で楽しめました。

 

ただ,あんたの亭主も実はこの弁護士と似たようなことをやってんだぞ,とはついぞ言い出せませんでしたが。。。

 

司法書士のお仕事紹介~債務整理編④ 個人再生(その2)~

  2020/08/11    ブログ, 債務整理

こんにちは。粒来です。

 

今回の記事では,前回の記事に続き,個人再生の手続きをご紹介します。

今回は,手続きを進めるための主な条件について説明します。

専門的で地味な話になりますが,ご了承ください。

 

【条件1】破産手続開始の原因となる事実の生ずる恐れがあること

 

まず,任意整理(債務額はそのままで分割方法だけを緩和する)での解決が難しいことが必要です。

個人再生では,裁判所が債権者の請求権を半強制的にカットすることになります。

そのため,権利を制限される債権者とのバランス調整のため,任意整理で普通に支払っていける余裕のある人は,個人再生ではなく任意整理を選択することになります。

任意整理の予算(月額)の目安額は,債務総額÷60です。

毎月返済に充てられる金額が上記の目安額を下回る場合はもちろん条件を満たしますが,それだけでなく,たとえば債権者の中に長期の分割払いに協力しない会社がおり,そのせいで予算オーバーになってしまったような場合にも,同様に任意整理での解決は不可能なので,個人再生で進める条件を満たすことになります。

 

また,収支だけでなく,保有する財産の額があまりに多額でないことも必要です。

特に気をつけなければならないのが住宅です。ローンの残債務額が住宅の価値を上回る「オーバーローン」の状態であれば,住宅の資産価値は事実上ゼロなので問題はないのですが,ローンが完済間近の場合や途中で繰り上げ返済をしている場合,ローン残を差し引いても住宅の価値が残る方がいらっしゃいます。

その場合,住宅の評価額とローン残の差額がそのままご本人の財産となるので,注意が必要です。

 

【条件2】継続して又は反復して収入を得る見込みがあること

 

個人再生は,債務が免除されて終わりの破産とは異なり,減額後の債務を分割で支払っていくことが必要です。

そのため,確実に分割払いを行っていけるかどうかという点にも,裁判所の審査が及びます。

 

その点,まずポイントになるのが,現勤務先の勤続年数と雇用形態です。

だいたい勤続5年以上で正社員であれば,会社の経営状態が危ない等の事情がない限り,裁判所に安心してもらえます。

ただ,必ずその条件を満たさなければダメというものではありません。

必要なのは3~5年の期間,毎月決められた額の返済を続けていけることを理屈で説明することです。

したがって,たとえば季節や時期によって繁閑のある仕事であれば,月次だと不安定でも年間通して見れば収支が安定していると説明したり,一般的にみれば不安定な業態・勤務形態だったとしても,過去の実績や,同条件で勤務する同僚の状況から,この先も収入が安定しているであろうことを説明したりします。

そうすることで,非正規雇用や収入に波がある自営業でも,裁判所に個人再生を認めてもらえる可能性が高まります。

 

いかがでしたでしょうか。

分割払いの予算確保のさえできればよい任意整理と,返済がまったくできない場合に行う破産の手続きは,いずれも対象となる方のイメージがしやすいのですが,中間に位置する個人再生は,具体的にどのような方が対象となるのかも,他の2つと比べて分かりにくい印象があります。

また,今回触れた条件以外にも,個人再生を進めるために満たさなければならない条件が数多くあります。

したがって,個人再生で進められるかどうかは,まずは当事務所にご相談ください。

 

次回は,債務整理の最後の切り札,自己破産についてご紹介します。