労働事件について ~不当解雇~
こんばんは、髙井です。
解雇に関する相談は、労働問題の相談を受けていて、非常に多いです。
今回は、解雇の相談を受けた際に、どのようにして、依頼者と問題解決を行っているのかを書きたいと思います。
まず、相談者から話を聞くときは、どのような理由で解雇されたのか、
そして、その解雇が、はたして、有効なのか、無効なのか、という点を意識して聞き取りをするようにしています。
そもそも、解雇について、法律ではどのように規定がされているかというと、
民法では、雇用に期間の定めがなければ各当事者は、いつでも解約の申込にをすることができ、この場合においては雇用は解約の申込み後2週間の経過によって終了する、と規定されています(627条1項)。
つまり、各当事者は、いつでも契約関係を終了されることができ、「解約の自由」が認められています。
しかし、使用者による「解約の自由」(解雇)を認めてしまうと、労働者の生活に大きな打撃を与えることになるので、労働法によって一定の制限が加えられています。
使用者による解雇は、労働契約法により制限が加えられており、同法では、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています(16条)。
したがって、解雇事件の多くは、使用者が主張する解雇理由に「合理性」と「相当性」が認められるか否かについて争うことになります。
労働者から依頼を受け、その解雇は無効であると争う場合、まずは、使用者に対し、解雇理由を記載した証明書を請求し、解雇理由を特定させることが必要となります。
そこで、使用者に解雇理由を特定させるために、
「退職時等証明書(労基法22条1項)又は「解雇理由証明書(同法2項)」
の交付を請求します。
労働者が使用者に対して、上記証明書の交付を請求した場合、使用者は遅滞なく、証明書を交付しなければなりません。また、この証明書に記載すべき解雇理由については、通達で「具体的に示す必要があり、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記載しなければならない。」とされています。
この解雇理由を特定させる意味は、
使用者が解雇の有効性を争う、あっせん、労働審判、民事訴訟などにおいて、証明書に記載した解雇理由とは別個の理由を、当該解雇について主張することを困難にするという効果があります。
つまり、使用者側が解雇理由を後出しで追加することを制限できるということです。
なお、証明書に記載された以外の解雇理由を後から主張することについては、肯定説と否定説がありますが、肯定説をとったとしても、証明書に記載のなり事実は、解雇当時、使用者がその事実を重視していなかったと評価されたり、解雇回避の措置や解雇に至る経過の点から当該事実が低く評価されたりすると考えられます。
したがって、解雇理由を記載した上記の証明書を、早い段階で使用者側に請求することは、大きな効果があるのです。
使用者から交付を受けた「退職時等証明書」又は「解雇理由証明書」を、依頼者と一緒になって検討します。その結果、使用者が主張する解雇理由に「合理性」と「相当性」が認められないと判断した場合には、解雇は無効であるから、「労働者は雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める。」という、地位確認請求の労働審判の申立をして、事件の解決にあたっています。
依頼者が、「こんな会社に戻りたくない。」と復職を求めずに、金銭的解決のみを希望する場合も、上記の地位確認請求の労働審判の申立を行います。
なぜなら、解雇が権利濫用として無効であると判断されれば、労働者は解雇日以降の賃金請求権が認められるからです。
この点について、無効な解雇を不法行為(民法709条)として損害賠償を請求し、慰謝料や遺失利益(解雇により退職させられなければ得られたであろう賃金相当額)等を請求する方が、ストレートに労働者の希望を実現できるようにも思えます。しかし、権利濫用にあたる解雇が当然に不法行為となるとは言えないため、地位確認請求の構成をとり、労働審判の申立をしております。
不法行為構成をとると、使用者の故意・過失、損害の発生、因果関係などの不法行為の成立要件を満たさなければならず、地位確認構成をとる方が、その後の争いやすさの点で都合がよいと考えられるからです。
労働審判の申立書には、「予想される浄点及び当該浄点に関する重要な事実」の記載が規則上求められています。そこには。相手方会社の主張する解雇理由はどのようなもので、その解雇理由には、「合理性」と「相当性」が認められないということを、具体的に記載していきます。
上記のとおり、「解雇理由証明書」には、解雇に至った理由やその事実関係まで詳細に記載されているので、会社が主張する解雇理由とその事実関係について、依頼者と一緒になって、様々な視点で検討し、労働審判の申立書を作成していきます。
打ち合わせを行う中で、私が、使用者側(相手方)の立場に立って、使用者側に有利になるように事実関係を解釈し、依頼者に質問を続けると、「髙井さんは、どっちの見方なんだ。」と怒り出す依頼者もいました。しかし、私は、依頼者との綿密な打ち合わせこそが、労働審判にとっては、最も重要だと考えています。依頼者も、私からの質問に答え、自分の意見を繰り返し述べることで、今回の事件の問題点や自分自身の主張も整理ができてきて、労働審判手続きでは、自分の意見をきちんと主張できるようになるのではないかと考えています。
不当解雇の事件は、残業代等の請求よりも依頼者から聞き取ることが多く、一緒に検討することも多いです。しかし、そこの手を抜いたら、問題解決は遠ざかるだけだと思い、依頼者に真剣に向き合って、問題解決にあたっています。