スタッフ日記

2015年2月4日 旧ブログ掲載記事


労働事件の関わりかた


こんばんは、髙井です。

 

先週に引き続き、労働事件のことを書きたいと思います。

 

労働問題の相談で多いのは、残業代の割増賃金の請求に関する相談と、不当解雇に関する相談です。

 

これらの相談を受けた場合、司法書士は、相手方に請求する金額が140万円以下であれば、代理人として相手方と交渉することができます。話し合いがまとまらなければ、訴訟代理人として、簡易裁判所の法廷に立つこともできます。

 

しかし、私が、労働事件を受任し、解決に至った事件の半数以上は、上記の訴訟代理人としてではなく、労働審判制度を利用して、労働審判申立書の書類作成支援を行うかたちで、問題を解決してきました。

 

このこともあって、私は、労働審判制度は、労働事件を解決するうえで欠かすことのできない制度であると考えています。

 

労働審判制度の特徴は、

 

迅速・適正・柔軟な紛争解決を図ることができ、かつ、紛争解決の実効性があると言われています。

 

原則として、3回以内の期日で審理を終結しなければならないと定められているため、通常訴訟と比較し、スピーディに紛争解決を図ることができます。
また、裁判官1名と労働関係の専門的な知識経験を有する2名(労使それぞれから1名ずつ)によって構成される労働審判委員会が紛争処理を行うため、適正な紛争解決を図ることができるともいわれています。
さらに、調停の成立による解決を試みるため、柔軟な紛争解決を図ることができます。
そして、民事調停とは異なり、調停がまとまらないときでも、審判というかたちで、裁判所の判断が示されるため、紛争解決の実効性があるともいわれています。

 

次に、労働審判の対象となるのは、「個別労働関係民事紛争」に限定されています。

 

この「個別労働関係民事紛争」とは、

 

解雇、雇い止め、賃金・退職金未払い、人事異動(配転・出向・転籍)、労働条件引き下げ、労働者の人格権侵害(セクハラ・パワハラ)、労働災害など、およそ、労働者と使用者との間の権利紛争であれば、労働審判の対象となります。

 

ただし、労働者間の紛争や公務員の任用関係に関する紛争などは、労働者と使用者との間の紛争ではないので、労働審判の対象とはなりません。

 

さらに、管轄裁判所にも特徴があり、労働審判を管轄するのは、訴額にかかわらず、全て地方裁判所とされています。しかも、一部の支部を除いて地方裁判所の支部では労働審判は実施されていなく、労働審判の申立は、地方裁判所の本庁に対して行う必要があります。

 

札幌地裁の管内の裁判所であれば、例えば、小樽支部や苫小牧支部などでは労働審判は実施されていなく、すべて札幌地裁の本庁で実施されることになります。

 

そして、司法書士が労働審判に関わる場合は、全て地方裁判所で取り扱われることになるため、代理人として関わることができません。そこで、労働審判申立書を作成するというかたちで、依頼者の支援をしています(司法書士法第3条1項4号「裁判所提出書類の作成業務」)。

 

労働審判手続きは、期日が3回まで決められているので、1回目の期日から充実した審理が行われます。
第1回の期日調整の際も、裁判所から第1回期日は2時間程度時間をとると言われます。
私の経験では、第1回期日最初の1時間~1時間30分ほどで、申立人と相手方が同席のもとで浄点等の整理を行い、その後は、解決金の話にもなるので、申立人、相手方、それぞれ別席で期日が進んでいきます。

 

私は、労働審判申立書を作成する際には、依頼者から事件に関することを様々な視点で聞き取りを行うようにしています。単に申立書を作成するのみではなく、上記の労働審判手続で浄点になるであろう点を依頼者と確認し、裁判官や労働審判委員から質問されても、問題なく答えられるよう、依頼者と綿密に打ち合わせを行うようにしています。

 

また、第1回期日の直前に、相手方の会社から答弁書が提出され、申立人の主張に対する反論書が、裁判所と申立人に提出されます。
この答弁書に対しても、第1回期日の直前に依頼者に事務所まで来てもらい、綿密な打ち合わせをして、必要であれば、答弁書に対する反論書も第1回期日までに提出するようにしています。

 

私は、労働問題を解決しようと司法書士のところに相談に来てくれる方は、単に法律や解決手段を知らないだけで、この点をサポートしてあげられれば、その人自身の力で、十分に問題解決をできる能力を持った人たちだと思っています。むしろ、私なんかが代理人として話すよりも、依頼人本人が相手方や裁判所に話す方が、はるかに説得力があり、迫力もあるんじゃないかと感じるときもあります。
この説得力や迫力は、第1回期日までに依頼者と何度も打ち合わせを行い、法的問題点を確認していく中で、どんどん増していくと感じるときがあるので、労働審判の打ち合わせは、単に申立書を作成するものという位置づけではなく、非常に重要なものだと思い、取り組んでいます。

 

依頼者と面談を重ねた結果、労働審判の手続きの中で、依頼者が自分の言いたいことをきちんと主張でき、問題の解決に至ったときは、今までの悔しい思いなども清算でき、納得したかたちで、新しい職場で再出発ができるんじゃないかと、労働事件を解決した依頼者を見ていて、感じるときがあります。

 

私と依頼者との相性もあるので、ここまで書いたように全てがうまくはいかないのですが、このようなかたちで、労働事件を解決できたときには、仕事をやって本当にやりがいを感じます。
もちろん、代理人として相手方と交渉し、その結果、問題解決に至ったときも、大きな喜びを感じるのですが、労働審判などの書類作成支援というかたちで、依頼者が主役となり、依頼者を補助的にサポートして、問題を解決できたときも、代理人とは違った意味で、大きなやりがいと感じます。

 

したがって、労働審判申立書の作成支援というのは、私にとって、大事な仕事であり、今後も力を入れて取り組んでいきたい分野でもあります。