スタッフ日記

2015年2月26日 旧ブログ掲載記事


労働事件について ~未払残業代等の請求①~


こんばんは、髙井です。

 

労働事件の相談の中で、不当解雇と同じくらい相談が多いのが、未払残業代等の請求に関する相談です。
未払残業代等の請求の相談を受けていて、1番頭を悩ますのが、労働時間の立証方法です。

 

会社は、原則として、労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならず、かつ、1日について8時間を超えて労働させてはなりません。これを超えて労働をした場合、超過労働時間について、一定の割増賃金(25%~60%以上)を支払わなければなりません。
「仕事が遅いから」「仕事ができないから」という理由で、残業代の請求を拒むことは当然できません。一度決められた給料と条件であれば、時間外に仕事をすれば割増賃金の支払義務が当然に生じます。

 

問題は、この超過労働時間をどのように立証するか、ということです。
会社が、タイムカードを利用していれば、実労働時間とタイムカードの打刻時間は、ほとんど一致するので、タイムカードがある場合は、それを前提として労働時間を計算していきます。しかし、タイムカードがない場合や、タイムカードの記載が実労働時間と異なる場合は、立証方法を工夫して、残業代を請求していくことになります。

 

残業代等の請求の相談を受けた場合は、まずは、タイムカードの有無を確認します。タイムカードの打刻時間は、客観性の高い資料のため、証拠価値もあり、タイムカードがあれば、未払残業代等の請求が認められる可能性は高くなります。

 

しかし、タイムカードがあっても、打刻時間が不正確であるため、タイムカードだけでは実労働時間を把握できないということもあります。よく見るのが、出社時間はタイムカードで把握できるけど、退社時間が打刻されていないというケースです。また、日付をまたいで仕事をするので、退社の際に打刻すると、翌日の出社時刻に打刻がされてしまうため、退社時刻は全て手書きで記載されているケースというのも見たことがあります。
この場合でも、使用者は労働時間を把握算定する義務を負っているので、労働者の手持ちの資料や、その職種の特徴から、可能な限り実労働時間を再現して、未払いの残業代等の請求を行えば、認められる可能性は十分にあります。

 

また、タイムカードがない場合であっても、仕事の関係から、日報や日誌を付けている場合があります。トラックの運転手などは「運転日報」等毎回の乗務ごとに付けることになっており、会社も一定の期間、運転日報を保管する義務を負っています。運転日報には、乗務開始時刻、乗務終了時刻、走行距離、経由地、休憩時間など、労働時間を導き出す情報が記載されているので、日報・日誌に記載された時間は有力な資料となります。もちろん、タイムカードより客観性が高くないので、実際の勤務状況等から、日報・日誌の記載が誤りとされる可能性はあります。しかし、これ以外に勤務時間に関する資料がない場合は、有力な資料となります。また、明確にこれに反する資料がない場合は、日報・日誌に記載された数字が認められる可能性は高くなります。

 

会社が労働時間の具体的な管理をしておらず、資料が存在しない場合でも、「労働者が自分の勤務時間をメモしていた」とか、「退社する際にメールを送って送信日時を記録していた」というような場合は、実労働時間を把握する資料となります。しかし、これらの資料は、私的につけたものなので、客観性が高い資料とはいえません。この場合は、様々な資料をもとにして、工夫して労働時間を再現していきます。
ただし、労働時間を正確に立証することができない場合も、「1週間に1日しか休みがなかった。」という方であれば、1日に最低でも8時間の労働をしていたことを立証できれば、週40時間を超えた分の割増賃金を請求することができます。また、職種によっては、深夜に働くことが当然なのに割増賃金が支払われていない場合もあります。この場合は、新聞配達員であることや、深夜営業する飲食店で働いていたことを主張するだけで、深夜労働時間の割増賃金の請求が認められる可能性は高くなります。

 

相談を受けていると、実労働時間を立証することが困難なケースがとても多いです。
この場合は、相談者から、仕事の内容を詳細に聞き取ります。相談者がもっている資料が労働時間を立証するのに使えないか検討してみたり、その会社のホームページや、求人情報を調べてみたり等、工夫をして、実労働時間の把握につとめています。