スタッフ日記

遺言を書く方が増えています

  2016/11/19    相続・遺言

こんにちは,高井です。

 

普段,相続の手続きのお手伝いをさせて頂いていると,ときには,円滑・スムーズに手続きが進まないときがあります。

例えば,一人の相続人の反対にあい遺産分割協議がまとまらないケースや,相続人の中に行方不明者がいるケースなど,事前に相続対策をとっておけば,こんなに相続手続に苦労しなかったのに・・・という事案にぶつかり,問題解決に非常に苦労する場面があります。

 

これらのケースでは,実は,事前の相続対策さえとっておけば,手続きも迅速に終わり,費用もかからず,親族間の対立も起こることなく,円満に相続手続が完了することが多いです。

 

このようなこともあってか,最近では,事前の相続対策の重要性が認識されつつあり,遺言を書く方が増えております。

 

では,なぜ,遺言は書いておいたほうが良いのでしょうか?

 

それは,遺産分割協議を省くことができるからです。

遺言があって,誰が何を相続するのかが明確になっていれば,相続人による遺産分割協議を省くことができ,円満で迅速な相続手続を実現することができます。

 

遺言が無い場合は,どのような手続きになるのかというと,

相続手続を進めていくには,遺産分割協議を行って,誰が何を相続するのかを決めなければなりません。しかも,遺産分割協議は多数決ではなく,相続人の「全員一致」がなければ成立しません。

 

当事者間で遺産分割協議がまとまらない場合は,最終的には,家庭裁判所の「審判」で遺産分割が決定されることになります。家庭裁判所の審判官は,すべての事情を総合考慮して妥当な遺産分割内容を決定することができるとされています。

しかし,遺産分割の審判には重大な制限があり,法定相続と異なる審判をすることができないのです。

 

ここで,この遺産分割の問題を考えるにあたって,一つの事例をご紹介したいと思います。

 

父親が死亡して,相続人として,長男・二男・三男の子供がいます。

法定相続分は,それぞれ3分の1ずつです。

そして,主な遺産は,自宅不動産だけです。

 

このような状況であれば,相続分どおりに分割することは非常に難しくなります。

父親と長年同居して老後の面倒をみてきた長男は,当然,自分が自宅不動産を相続できると思っています。

しかし,二男や三男が相続分を主張した場合は,長男が父親の面倒を長年,献身的にみてきたとしても,長男は,自宅不動産を取得するかわりに,二男と三男にそれぞれ3分の1相当額の代償金を支払わなければなりません。

また,長男が代償金を用意できなければ,最悪,自宅を売却して,自宅を売ったお金を相続分に従って分けることになってしまいます。

さらに,これが,店舗兼住宅で,この不動産で長年商売をされていた場合は,もっと大変なことになってしまいます。

 

どうして,このようなことが起こるのかというと,それは,民法が定める相続分が,相続財産と合っていないことが大きな原因なのです。

遺産が,現金と預貯金のみであれば,法定相続分どおりに分けることもできますが,ほとんどの相続のケースでは,相続人全員の要求を満たす資産構成になっておらず,遺産分割の話し合いがこじれて,長期化したり,時には争いが生じたりするケースもあります。

 

一方,遺言があって,誰が何を相続するのか明確になっていれば,相続人による遺産分割協議を省くことができます。

その結果,相続人間の争いを防ぐことができ,円満で迅速な相続手続を実現することができるのです。

 

遺言は,民法の定める相続分に拘束されることなく,自由に相続分を指定することができます。揉めないための相続を実現するためには,被相続人が生前に遺言書で,法律で定める相続分を資産構成に応じて動かし,円満に相続できるように相続開始時の設計図を作成して示す必要があるのです。

 

例えば,先ほどの事例では,遺言書で「不動産は長男に相続させる。その他の預貯金を含む一切の財産は,二男・三男に2分の1ずつ相続させる。」という遺言を残しておけば,遺産分割協議自体を省くことができ,兄弟間での争いを予防することができます。

さらに,遺留分対策として,長男を受取人とする生命保険に入っておけば,万が一遺留分減殺請求を受けたときも,保険金でまかなうことができます。

 

法律上,遺言書を作成し,相続対策をとることができるのは,「被相続人」だけです。

そのため,残された相続人が円満な関係を維持していくためにも,遺言書は必要になってくるのです。