スタッフ日記

相続手続のルール変更と遺言の重要性

  2017/01/11    ブログ, 相続・遺言

あけましておめでとうございます。粒来です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

新年1回目の当番ということで,今回はまじめに,少しでも皆様のためになる情報を提供させていただきたいと思い,相続手続について書くことにしました。

以下,写真もなく長文ですが,お付き合いいただければ幸いです。

 

昨年の12月19日,最高裁判所で,相続手続に関し,従来のルールを変更する重要な決定がありました。

なお,最高裁判所は,言わずもがな日本で最も権威のある裁判所で,ここで新しい判断がされるということは,実務上,新しい法律ができるのと同じくらいの意味があります。

 

決定の内容は,「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる」というものでした。

 

今までは,共同相続された普通預金や通常貯金は,不動産や有価証券などと違い,遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を決める話し合い)がなくても,各相続人が独自に自分の取り分を主張できることになっていました。

そのため,相続人の意見が一致せず遺産分割協議がまとまらない場合でも,最悪,一部の相続人が自分の取り分だけを請求すれば,(金融機関の抵抗はありましたが)最終的には預貯金の一部だけの払い戻しを受けることができていました。

 

しかし,今回の決定により,今後は相続人間で協議がまとまらないければ,時間と労力のかかる家庭裁判所の調停や審判までして遺産分割をまとめないと,払い戻しを受けることはできなくなりそうです。

 

つまり,今回の決定により,相続人の足並みが揃わない一部のケースにおいては,相続手続きを進めることがより一層難しくなりました。

 

しかし,自分の推定相続人同士の不仲等で,協議がまとまる見込みが薄いことが生前から分かっているのに,何も対策ができないかというと,そうではありません。

遺言を使って,自分で自分が亡くなった後の財産の分け方を決めてしまえばよいのです。

 

遺言では遺産分割方法の指定(遺産の具体的な分け方を,遺言者が事前に決めてしまうこと)ができ,これをしておけば,遺言者が亡くなった後で,相続人が遺産分割をまとめる必要がなくなります。

今回の決定は,遺産分割の対象となる(相続人全員が口を出せる)財産をできる限り広くすることで,相続人間の公平を図ろうというものなのですが,そもそもそこまでして相続人間の公平に配慮しなければならないのは,被相続人(亡くなった方)が,自分が亡くなった後の財産の処分方法を決めていないからです。

相続財産は被相続人のものですから,その人が決めた分割方法であれば,多少の不公平があっても,「自分の財産をどう処分しようと自分の勝手」ということで正当化できます。相続人にとっても,被相続人が決めておいてくれた遺産分割の方法に従って手続を進めるのと,利害関係人同士の話し合いで手続を進めるのとでは,大きく気持ちが違うはずです。

 

今回の最高裁決定は,上記のとおり一部のケースにおいて相続手続を難しくするものではありますが,同時に相続対策としての遺言の重要性をさらに高めるものではないかと思います。

 

今回の件に限らず,遺言を残しておくことで回避できる相続手続のリスクや手間はたくさんあります。遺言の作成を検討されていたり,詳しく話を聞いてみたいという方は,ぜひ当事務所までご相談ください。