スタッフ日記

相続まめ知識② ~平成30年相続法改正(1)

  2018/10/03    ブログ

こんにちは。粒来です。

 

貴乃花親方(以下,「タッキー」という。)が年寄を引退するそうですが,11歳下の粒来は司法書士としてまだまだ幕下レベルです。

 

さて本日は,連載すると宣言しながら早くもうやむやになっていた,相続まめ知識の第2回をお送りします。

 

今回の話題は,「平成30年相続法改正」です。

 

当事務所のメルマガ を受信していただいている方には既に概要をお伝えしましたが,今年,相続についての基本的なルールを定めた法律が,昭和55年以来40年ぶりに大改正されました。発効日は改正項目によりまちまちですが,一番近いもので約3か月後(平成31年1月13日)です。

今回の改正は,今後の相続実務に直結する変更がたくさんありました。相続まめ知識ブログの格好のネタになるので,順にご紹介していきたいと思います。

 

1.自筆証書遺言の作成方法・保管方法の変更

法律上,遺言を作成する方法は実は何通りもあるのですが,そのうち作成だけを考えると最も手軽なのが「自筆証書遺言」です。

遺言をする人が全文を自筆で書いて捺印するという,2時間ドラマなどでたまに登場する毛筆書きのアレです(必ずしも毛筆で書く必要はありませんが)。

思い立ったらいつでもどこでも遺言を作成できる手軽さと,規定されている形式的な要件を満たさないと,即,遺言全体が無効になるというシビアさが隣り合わせの方式なのですが,特に大変なのが,「遺言書の全文を自筆で書かなければならない」という要件でした。

たくさんある財産の行き先を逐一決めていこうとするのに,それらを網羅的に全部手書きしなければならないというのは,場合によっては遺言者の過度な負担になります。一般的に遺言をするのは高齢の方が多いので,なおさらです。

 

そこで今回の改正では,この点に対する手当てとして,遺言書の内容のうち,財産の目録部分は手書きしなくてもよくなりました。

パソコンで財産目録を作成して印刷したものでもよいですし,遺言で行き先を指定する財産の登記簿謄本や預貯金通帳のコピーなどを遺言書に綴ってしまい,遺言書本文でそれを引用する形でもOKです。

相変わらずその他の要件はそのまま残されているので,大幅に自筆証書遺言が身近になったかというとそんなことはないのですが,従前よりも遺言者の負担が軽くなったのは間違いありません。

なお,この新しい方式の自筆証書遺言ができるようになるのは,平成31年1月13日からです。

 

また,自筆証書遺言の重大な欠点として,遺言書の保管に困る(原本が1通しかないので紛失したら終わり。また,遺言書の内容について秘密を守り,改ざんを防ぐためには遺言者自身が保管しておくのが一番よいが,亡くなった時に遺言書を見つけてもらえないと意味がない。)という点と,死亡後の手続き(家庭裁判所による遺言書の検認)が面倒という点がありました。

今回の改正ではこれらに対する手当てとして,法務局に自筆証書遺言の原本を保管してもらえるようになり,法務局保管の遺言は,死亡後の家庭裁判所の検認も省略できるという制度ができました。

ただ,一見すると非常に画期的な改正なのですが,制度の内容をよくよく見てみると,法務局には必ず遺言者本人が遺言書を預けに行く必要があったり,法務局保管の遺言書も,死亡後にする手続の内容が結局,従前の検認手続とそれほど変わらないものになりそうだったりと,この改正は,それほど利便性の向上にはつながらなさそうな予感も漂っています。

なお,この遺言書の保管制度はまだ細かいことまでは決まっておらず,利用できるようになる日も未定(平成32年7月12日までのいつか)です。

この点は,細かいことがはっきりした段階で,またブログなどでお知らせすることになるかもしれません。

 

今回の記事で主な改正点をすべて網羅してやろうと考えていましたが,意外と記事のボリュームが大きくなってしまい疲れました。続きは次回以降のブログに回します。

 

タッキーもお疲れ様でした。