スタッフ日記

実質的支配者(←ただならぬラスボス感)

  2019/07/31    ブログ, 登記

こんにちは。粒来です。

 

某芸能事務所の闇営業問題のおかげで,「反社会的勢力」という言葉の注目度が一気に上がったように思います。

 

今回はこれにちなんで,司法書士と反社会的勢力との関わりについて,ご紹介させていただきます。

(誤解を招く表現でしたが,そういう意味ではありません。)

 

ちょっと前に,株式会社などの設立時の定款認証手続(会社の基本的なルールを設立前に公証人にチェックしてもらう)に一部変更がありました。

具体的にどういう変更だったかというと,会社の「実質的支配者」が反社会的勢力に属する人物でないかを定款認証時に確認して,該当する法人の定款を認証しないことで,反社会的勢力による法人の設立を妨げるという枠組みが,新たに作られました。

 

要するに,会社設立の手続にフィルターをひとつ設け,ヤク◯(やくまる)さんの悪だくみのための会社を設立しにくくしたということです。

 

規定の内容は,このようになっています。

 

公証人法施行規則

第十三条の四 公証人は,会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には,嘱託人に,次の各号に掲げる事項を申告させるものとする

(以下略)

 

公証人に申告する義務があるのは,定款認証の「嘱託人」です。

そして,司法書士が会社の設立登記を行う場合,多くは,実質的支配者本人ではなく,司法書士が定款認証の嘱託人となります。

つまり,司法書士が公証人に,「今回の設立にかかる会社の実質的支配者は,反社会的勢力ではありません」と宣言する義務を負うことになりました。

 

制度趣旨だけみると素晴らしい制度です。しかし,問題は実効性です。

なじみの方に法人設立を依頼されることもないわけではありませんが,会社設立の依頼者は,どちらかというと初対面の方が多いです。

司法書士は警察や公証人と違い,反社会的勢力に属する人物のリストを持っているわけではありません。目の前の依頼者が反社会的勢力でないことを確認する方法となると,結局のところ,その人の申告頼みになります。

(当たり前ですが,見た目で判断するわけにはいきません。)

 

しかし,司法書士に問われて「私,反社会的勢力です!」と堂々と申告してくれる人は,そもそも隠れ蓑の法人設立など行いません。

詳しく書きませんが,この制度には他にも抜け道があり,残念ながら今回の改正は,司法書士や公証人の責任や手間を重たくしただけの,ザル法の匂いがぷんぷんしています。

 

なお,新しい手続を経て定款認証を受けた後には,公証役場に請求すると,「申告受理及び認証証明書」というものを,無料で発行してもらえるようにもなりました。

これは,当該会社の実質的支配者が反社会的勢力でないことについて,公証人のチェックをクリアしたことの証明書であり,会社設立後に法人名義の預貯金口座を開設する際に,金融機関に提出するなどの活用方法が想定されているようです。

 

 

月末で雑務に忙殺されているところに連日の猛暑が重なり,内容がだいぶ愚痴っぽくなってしまいました。

アメトーーク!でも見て気分転換して,次回はもう少し明るい話題を提供できるよう頑張ります。