こんにちは。司法書士の粒来です。
だいぶ前の記事 になりますが,株式会社の設立の際,司法書士などが公証人に対し,設立会社の実質的支配者が反社会勢力でない旨を申告しなければならなくなったとご紹介しました。
この制度が,去る7月に一部改正されました。
改正点は,実質的支配者が反社会勢力ではないという事実を,赤の他人である司法書士でなく,実質的支配者本人から(表明保証という形で)申告できるようになったことです。
どなたが見てもそりゃそうだろうと思っていただける内容かと思いますが,制度改正のきっかけになったとされる実例が,冗談みたいな話だったので晒し上げご紹介します。
ある司法書士が定款認証の代理申請をした際,届け出た実質的支配者の氏名と生年月日が,公証人が把握する反社会勢力リストの人物と一致してしまうという事案がありました。
こういう引きの弱い人物はどこにもいます。私じゃなくてよかった。
その際の公証人と司法書士とのやりとりがこちら↓です。
司「今回設立する会社の,実質的支配者にかかる申告書を提出します。」
公「・・・この人物は反社会勢力の可能性がある。ついては,背中や腕に反社人物と推定される特徴がないか直接確認してきてください。」
司「 」
この公証人はいったい何を考えていたんでしょうか。
これがバラエティ番組ならBPO審議入り待ったなしです。
私だったら依頼者を公証人のところに連れて行き,公証役場を抗争現場にしてやっていたかもしれません。しかし,この司法書士は冷静でした。
依頼者に直接確認するのは難しいと判断して,警察に相談しました。
その際の警察と司法書士とのやりとりがこちら↓です。
司「公証人から,反社かもしれない人物に入れ墨がないか直接チェックしてこいと指示されて困っています。」
警「・・・司法書士に,いったいどんな権限があってそんな調査をしてるのかね。」
司「 」
このエピソードを聞いた時にまず思ったこと。
公証人も警察も,闘う相手を間違ってやいませんでしょうか。
どう考えてもこの騒動最大の被害者は,運悪く板挟みになってしまった司法書士です。
その司法書士が,なぜ関係各位からフルボッコにされているのでしょうか。
このような経緯で,1名の尊い犠牲のうえに問題点が浮き彫りになり,冒頭の制度改正が実現しました。
改正すべき点はそこだけじゃないような気もしますが,それはそれとして,問題点,特にわれわれ司法書士が割を食うだけの謎手順がすぐに改められたのは,とてもよかったと思います。
この改正がなければ,真冬の北海道でも,依頼者に半袖薄着で事務所にお越しいただくようお願いしなければならないところでした。
おそらく依頼者が反社じゃなくても怒られます。