スタッフ日記

司法書士のお仕事紹介~商業登記編⑥ 恐怖の「みなし解散」~

  2021/10/08    ブログ, 登記

こんにちは。司法書士の粒来です。

 

前回は,商業登記をしないでいると過料の請求を受けるというお話でしたが,今回は,会社によっては過料より痛いかもしれないペナルティのお話です。

 

前回の記事で,株式会社の役員は,メンバーに変更がなくても任期が到来するたびに更新の登記をしなければならないとご紹介しました。

そして,株式会社の役員の任期は,最長でも10年です。

したがって,きちんとルールを守っている会社は,必ず10年に1回以上の頻度で登記をしています。

10年以上登記記録に動きがない会社は,登記をするのを忘れているか,あるいは既に営業実態がなく,放置されている会社のどちらかです。

 

そこで,最後の登記から12年を経過しても登記記録に動きがない株式会社は,法務局から状況確認(警告)の通知が送付されることになっています。

ただ,もしそのような通知が来てしまっても,あわてず法務局に通知の返答をするか,怠っていた登記の申請をすれば,さしあたり大きな問題にはなりません。

 

問題は,そのどちらもしなかった会社です。

通知に対して何もリアクションをしないと,その会社はもはや営業実態がないと法務局に判断され,なんと,法務局に勝手に会社の解散(≒廃業)の登記をされてしまいます。

これを,「みなし解散」といいます。

 

法務局が解散させた会社は,法人の代表者がいなくなります。

(誤解を招く表現でしたが,登記をしなかった罪で社長が法務局の職員に連れ去られるわけではありません。解散により代表取締役の地位を失ってしまうということです。)

そのため,会社名義の契約などができなくなります。

 

また,解散した会社は法律上,廃業に向けた行為しかできないので,営利目的で事業を継続することも許されません。

どれほど順風満帆な会社でも,法務局の手続きを無視したという一事をもって,事業の停滞を余儀なくされてしまうことになります。

たかが登記,されど登記です。

 

なお,一応の救済措置として,みなし解散の登記がされてから3年以内であれば,会社を復活させる登記(会社継続の登記)をすることが可能です。

しかし,たとえ継続の登記をしても,一度されてしまった解散の記録は消えません。

登記記録を見ただけで,法律上やらなければならないことを怠り,お仕置きを受けた会社というのが一目瞭然になってしまいます。

これも地味に痛い。

 

ちなみに,この「みなし解散」の制度,会社の種類が有限会社や合同会社の場合には存在しません。

有限会社や合同会社は役員(社員)の任期に制限がなく,定期的に必ずしなければならない登記というものがありません。そのため,ルールをきちんと守っていても,ずっと登記の機会がないことがあり得るからです。

有限会社を新しく作ることはできませんが,合同会社は設立が可能ですので,ご自身がずぼらとの自覚がある法人設立希望の方は,株式会社でなく,合同会社を選択してもよいかもしれません。

どうしても株式会社でいきたいという方は,もう観念して当事務所にご依頼ください(*^_^*)

 

以上,今回は,情け容赦ない「みなし解散」の制度についてご紹介しました。

 

だんだんと記事のネタがなくなってまいりました。

次回は,引き続き商業登記にまつわる話題を絞り出してご紹介するかもしれませんし,もしかしたら私の家族のよもやま話でお茶を濁すかもしれません。

 

どのような記事になるか,お楽しみにせずにお待ちください。。。