こんにちは。司法書士の粒来です。
今回は, 前回記事 に引き続き,商業登記で登録免許税を節約する工夫についてご紹介します。
ポイントは,商業登記制度にある以下のルールです。
【ルール1】
商業登記の場合,あった出来事の種類にかかわらず,いろいろな登記をまとめて1件で申請すること(一括申請)が原則
【ルール2】
商業登記の登録免許税は,あった出来事(登記事項)ごとにカテゴリー(課税区分)が決められており,1件の登記申請の中に同一課税区分の登記事項が複数あった場合でも,かかる登録免許税は1回分で済む
これを,前回の事例にあてはめてみます。
前回の事例は,
(1)令和3年4月10日 取締役Aさんが辞任
(2)令和3年4月16日 株式会社Aには監査役を置かないこととし,同時に監査役Bさんが退任
(3)令和3年4月23日 会社名を「株式会社A」から「株式会社C」に変更
というものでした。
この事例の場合,(1)の取締役の辞任と(2)の監査役の退任は,いずれも「役員変更」で同一課税区分です。
同様に,(2)の監査役設置会社の定め変更と(3)の商号変更も,実は「その他の変更」で同一課税区分です。
したがって,(1)~(3)の登記申請を順次3件ではなく,まとめて1件で申請すれば(上記【ルール1】),重複する課税区分の登記事項が1回分の計算で済みます(上記【ルール2】)。
結果,かかる登録免許税は,「役員変更」の1万円と「その他の変更」の3万円の,合計4万円で済むようになります。
ご理解いただけましたでしょうか。
さて,ここからは当ブログお決まりの展開ですが。。。
本記事をご覧になり,情報量の多さと面倒くささに困惑しているあなた(特に会社の総務担当の方),私が何を申し上げたいかというと,
悪いようにはしないので,観念して登記は司法書士に任せてください
ということです。
登記はやることの形が決まっている業務なので,インターネット環境と根性さえあれば,自力で登記申請までたどりつくことはおそらく可能です。
しかし,数年に一度の登記のためにネット検索と書類作成に時間を取られた結果,本業の時間が削られ,あげく申請の補正のために何回も法務局に呼ばれるなんてことになれば,会社にとってはむしろ損失ではないでしょうか。
そこまで頑張って登記完了までたどり着いたとしても,今回の事例のように,本来低く抑えられたはずの登録免許税を気付かずに多く納付してしまったりしたら,もう目も当てられません。
司法書士にご依頼をいただければ,登記申請書はもちろん,議事録などの添付書類も司法書士が作成します。当然,費用負担についても(合理的な範囲で)なるべく低く済むようアドバイスをします。
また,万一,申請の補正があったとしても,依頼者にバレないようにこっそり司法書士が法務局に行くので安心です。
でも,お高いんでしょう?と思ったあなたも,ご安心ください。
商業登記の場合,ほとんどのケースでは,司法書士の報酬よりも,実費の登録免許税の方がよっぽど高額です。
つまり,自力の登記申請でしくじって税金を余分に納めるくらいなら,最初から司法書士に依頼した方が,時間的にも経済的にも断然お得なのです。
ネット全盛のこのご時世,定型業務である登記を生業とする司法書士がしぶとく生き残っている理由について,少しでも思いをはせていただければ幸いです。
最後に。
本記事をご覧になっていただき,「まとめて申請した方が得なら,登記は何年かにいっぺんまとめてすればいいや。」と思ったそこのあなた。
次回記事では,そうは問屋が卸さない,恐ろしい「登記懈怠」のペナルティについてご紹介します。
どのような記事か,お楽しみにお待ちくださいΨ(`∀´)Ψヒヒヒ