こんにちは。粒来です。
今回からは,債務整理の奥の手,自己破産の制度についてご紹介します。
自己破産と聞いて,本記事をお読みの方はどのような印象をお持ちでしょうか?
専門家として債務整理の相談を数多く受けていると,これまでご紹介した整理の方法のうち,世間のイメージと実体との間に最も差があると思うのが,自己破産の手続きです。
ありがちな誤解としては,
①保有するすべての財産を処分されてしまう
→ 確かに,一定以上の財産があれば,換価され,債権者に配当金として支払われることになります。
しかし,生活や教育に必要な家財道具・学習用品、当面の生活に必要な額の現金などは,法律上,破産しても保有を続けられるルールになっており,その結果,まったく財産を失わずに済む方も多くいらっしゃいます。
また,問題になるのはあくまで破産する方自身の財産のみで,他人の財産については,たとえ家族のものでも,原則として債権者から守られます。
②勤務先に,破産した事実が知られてしまう
→ 職場が債権者(給料の前借りをしているなど)でない限り、裁判所から勤務先に破産の事実が通知されることはありません。
破産は財産と負債の調整作業であり,そのどちらとも関係ない勤務先に連絡をしても意味がないからです。
③公民権がはく奪されてしまう
→ これもガセネタです。戸籍に破産の事実が記載されることはありませんし,選挙権もなくなりません。
保険外交員や警備員など,業法上,制限がかかる職業(資格)はありますが,それらはごく一部の職業で,かつ,そういった業法上の制限も裁判所が破産の手続に取りかかっている数ヶ月の間です。
といったものがあるでしょうか。
極端な話,破産をしたら人間失格,人生終了みたいなイメージを抱かれている方もいらっしゃるように思います。
しかし,当たり前ですが,国が法律で認めている制度に,そんな賭博黙示録カイジみたいな展開はありません。
破産は,あくまでリセット&リスタートの制度です。
破産をする方の中には,相談・依頼の直前にもなると,返済のために新たな借り入れをし、返済のために仕事をする状態になっている方が多くいらっしゃいます。
生活の中心が借金の返済になってしまい,せっかく働いて得たお金も,借入金の返済とギリギリの生活費ですべてなくなってしまいます。自分のお金なのに,使い途に選択の余地はありません。
そのような生活を続けることが,非常に精神的にこたえるものだというのは,想像に難くありません。
借金を帳消しにすることで,そのような過酷な状況から脱出してもらい,ふたたび建設的に人生を歩んでもらう契機を設けるというのが,破産の制度なのです。
いかがでしたでしょうか。
破産についてのネガティブなイメージを,少しは払拭できましたでしょうか?
今回の記事でアメをばらまいたところで,次回の記事では,そうはいっても手続上,債権者に通さなければならない筋の話など,少し厳しめの話(ムチ)をしたいと思います。
どのような記事か,お楽しみにお待ちください。( -`ω-)+ノシ